大型買収はあり得るか
エヌビディアは大型M&Aの引き金を引くだろうか。人々がそれを話題にするには理由がある。エヌビディアは約6兆ドル(約948兆円)の株式時価総額を持ち、数十億ドル(数千億円)規模の戦略的投資を行っており、ほぼ誰でも買収できる資金力を持つ。
理にかなうもう1つの理由がある。好況期と株価上昇局面では、しばしば巨大な買収案件が生まれるからだ。2000年のタイム・ワーナーとAOLによる1800億ドル(約28.44兆円)規模の取引、あるいはより最近のイーロン・マスクが主導したSpaceXとxAIの取引を思い出してほしい。
M&Aの煙の下に火があるかどうかはともかく、より広い販売チャネルを必要とする状況が、エヌビディアに選択肢の検討を促す可能性はある。エヌビディアは地球上で最も価値あるテクノロジー企業となったが、完全に統合されたAIシステムを提供するためのストレージやネットワーキングなどの分野で地位を強化するには、依然として技術パートナーが必要だ。
エヌビディアの増大する力、膨らみ続ける時価総額、そして多角化の必要性を考えれば、買収には一定の合理性がある。デルとHPEの株価は市場の成長を受けて急上昇しているが、依然として比較的割安である。
奇しくも、ネットワーキング大手のシスコシステムズも株価が急上昇している。ただし、同社について投資家の関心が高まっている最大の要因は、最近発表した力強い決算だろう。筆者は、エヌビディアとシスコシステムズが最も強力な提携の1つになり得ると見ている。
エヌビディアの最近の動きから判断すると、同社は経験豊富な「成熟した」テクノロジー大手と提携し、統合製品を作り上げ、顧客がより速く導入できるよう支援することの利点を見出している。
数兆ドル(数百兆円)の時価総額がすべてを可能にする
そうした取引を魅力的にし得る、桁外れの経済性を見てみよう。エヌビディアの時価総額は5兆4000億ドル(約853.2兆円)で、ウォール街のアナリストは2026年の年間売上高ランレート(推計値)を3200億ドルから3740億ドル(約50.56~約59.09兆円)と予測している。これに対し、デルの時価総額は約1530億ドル(24.17兆円)、年間売上高は1200億ドル(18.96兆円)である。エヌビディアの株価売上高倍率(PSR)は25倍、デルは1倍だ。つまり、エヌビディアがデルを買収すれば、自社株の評価倍率の25分の1という安さで1000億ドル(約15.8兆円)超の売上高を獲得できる計算となる。これは、ストレージ、サーバー、その他の企業向けシステムへのより広範な多角化の道も提供する。
シスコシステムズやHPEについても同様の比較ができるが、シスコシステムズの方が(このアナリストの意見では)より強力な組み合わせとなるだろう。シスコシステムズはネットワーキング分野のリーダーと見なされており、現在ネットワーキングはAIシステムの重要な要となっている。エヌビディアにも独自のネットワーキングソリューションがあるが、シスコシステムズは企業ビジネスやクラウド・通信プロバイダー向けにはるかに大きな顧客基盤を持っている。
シスコシステムズの現在の時価総額は4700億ドル(約74.26兆円)で、最近今年の成長率を14%と見通したが、これほど成熟した企業としては印象的な数字だ。ただし、シスコシステムズの時価総額はエヌビディアのわずか8%にすぎない。これらの数字は、買収案件の魅力的な経済性を示し得るものだ。
候補の中では、HPEが最も魅力に乏しいだろう。ここで議論された企業の中で最も規模が小さく、シスコシステムズやデルに比べて戦略的な要素も少ない。時価総額は比較的少ない440億ドル(約6.95兆円)、直近12カ月の売上高は360億ドル(約5.69兆円)である。最近のJuniper Networksとの合併を経てもなお、HPEはネットワーキング市場でシスコシステムズに次ぐ2位にとどまっている。
こう考えてみてほしい。エヌビディアは現在の市場価格でデル、シスコシステムズ、HPEをすべて買収できるが、それでも同社の時価総額全体のわずか10%程度にしかならないのだ。実に驚くべきことである。
実現するかどうか。何でも起こり得る。より統合されたシステムを構築し、企業市場へとより深く入り込むために提携を進めるという方向性は、フアンが明らかに念頭に置いているものだ。


