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2026.05.23 08:52

ハリウッド映画が教える「価値創造」の本質──『プラダを着た悪魔2』を読み解く

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ビジネスの世界において、私たちは数字の計算には非常に長けている。売上高、TSR(株主総利回り)、EBITDA、従業員数といった指標だ。しかし、それらの数字が何を意味するのか、あるいは長期的な価値創造を実際に推進する人間の行動パターンとは何かを理解することについては、驚くほど未熟なままである。

本稿は全8回シリーズの第1回として、シンプルだが力強い1つの考え方を提示する。真の価値創造は、人が自らをどこへ向けているか──他者のために価値を生み出すのか、自分のために価値を生み出すのか、それとも不確実性の中で立ちすくむのか──を理解することから始まる。シェイクスピアからハリウッドへ、取締役会から経営幹部室へ。こうしたパターンは、目の前にありながら見過ごされている。価値創造というレンズを採用すると、人間の世界に焦点が合う。ハリウッド映画でさえ、豊かな学びを与えてくれるのだ。

『プラダを着た悪魔2』を例に考える

最近公開された『プラダを着た悪魔2』は、前作に登場した4人のエグゼクティブたちの進化を描いている。彼らの本質的なDNAを保ちながら、20年後の意味のある物語の展開を見せてくれる。続編が分析するのは、デジタル/AIによる破壊的変化の中での「レガシー」、陳腐化、そして組織としての生き残りである。いまやアンディは大物の1人だが、価値創造が容易になるわけではない。

アンディ・サックス(アン・ハサウェイ):前作では、右も左もわからないアシスタントからファッション業界のインサイダーへと成長し、最終的には業界の冷酷な文化を拒否してジャーナリストとしての誠実さを選んだ。続編では、突然の解雇を経て、自信に満ちた特集編集者として戻ってくる。スキャンダル後の「ランウェイ」を救うため、倫理的なジャーナリズムを推進する。彼女の物語は理想主義と「他者のための価値」を強調しており(倫理的な買い手の確保、雇用の維持、告発記事の執筆)、純朴さから成熟した目的意識への成長を示している。

ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ):前作では、冷徹で人を操る暴君として描かれ、成長は見られなかった。続編でも相変わらず威圧的でレガシーに執着しているが、数々の挫折を経て、脆弱な一面を見せ始める。人事規則に縛られ、紙媒体の衰退に直面し、過去の過ちを認め、珍しく称賛の言葉を口にしながら、「ランウェイ」の存続のために戦う。やや軟化したものの、かつての自己中心的な「悪魔」は依然として潜んでいる。

エミリー・チャールトン(エミリー・ブラント):前作では、アンディに嫉妬する神経質で競争心の強い先輩アシスタントだった。続編ではディオールの上級幹部となり、復讐心に燃える自己中心的な人物へと変貌する。スキャンダルと億万長者の恋人を利用して敵対的買収を企てる。彼女の物語は最も敵対的であり、個人的な野心と怨恨に突き動かされている。「自己のための価値」を追求するキャラクターとして最も明確に描かれている。

ナイジェル・キプリング(スタンリー・トゥッチ):前作では、ウィットに富み洞察力のあるアートディレクターであり、メンターでもあった。続編では物語の感情的な核を担い、静かな忠誠心でアンディの復帰を裏で画策し、ついに遅ればせながら正当な評価を受ける。彼の物語は最も純粋に「他者のための価値」に根差しており、心温まる最も強い感動を与えてくれる。

価値創造の評価

ナイジェル・キプリング(スタンリー・トゥッチ)は、他者のための価値創造において最高評価を得ている。最も一貫して利他的な人物だ。メンターとして行動し、静かにアンディの復帰を画策し、同僚を支え、忠誠心と評価を通じて解決を模索する。彼の物語は最も心温まり、純粋に価値志向である。上司であるミランダ・プリーストリーが生み出す価値の毀損の多くを、彼が修復している。

アンディ・サックス(アン・ハサウェイ)は、他者のための価値創造において高い評価を得ている。前作よりも成熟した理想主義を示している。「ランウェイ」を倫理的に救済するために戻り、倫理的な買い手を推進し、雇用を守り、業界のコストに関する告発記事を書く。個人の誠実さとより広い社会的影響のバランスを取っている。

ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)は、レガシーと権力という両面において、主として自分のための価値創造に関心を置いている。ただし、いくらかの変化も見られる。終盤にかけて、珍しく脆さをのぞかせ、アンディを励ます場面すらある。それでも彼女は概ね自己利益優先である。いくらか進化はしたが、自己中心的な「悪魔」はなお潜んでいる。

エミリー・チャールトン(エミリー・ブラント)は、自分のための価値創造にさらに強くこだわっている。最も敵対的で自己中心的な人物だ。スキャンダルと億万長者の恋人を利用し、復讐心から敵対的買収を企てる。彼女を動かすのは怨恨と個人的野心である。終盤での見せかけの和解は、長くは続かないかもしれない。

現実世界との相似

この映画が時宜を得ているのは、結末をややロマンチックに描いているとはいえ、現実の業界危機を映し出しているからである。

  • ジャーナリズム:スピーチの最中にテキストメッセージで一斉解雇を知らされるアンディの体験は、2025〜2026年に米国メディア全体を襲った苛烈な人員削減を彷彿とさせる。新聞関連の雇用は2025年に約8%減少し、『ワシントン・ポスト』(300人超のジャーナリスト)をはじめ、各社で大幅な削減が続いた。背景にはAIによる自動化、広告収入の崩壊、そしてGoogleの「AI Overviews」がある。「真剣なジャーナリズム」とクリックベイト経済の緊張関係をめぐる描写は的確だ。
  • ファッション/メディア:搾取工場のスキャンダルは、ファストファッションを悩ませ続けるサプライチェーンの告発を反映している。ディオール幹部としてのエミリーの影響力は、広告主が編集方針にますます影響を与えている現状を浮き彫りにしている。テック系富豪による買収の試みは、レガシーメディアを脅かすプライベートエクイティやAI主導の業界再編を映し出している。広範なメディア・エンターテインメント業界では1万8000人以上が職を失い、ラグジュアリー業界もパンデミック後の不安定さに直面している。

本作は業界の陰鬱さを効果的に捉える一方で、指標を追いかけ続ける日々の消耗戦は控えめに描き、気分の良い「レガシーの救済」を過剰に提示している。現実には、データが示すように、「ランウェイ」のようなメディアのほとんどは、英雄的で倫理的な救済を受けるのではなく、単に縮小するかデジタルコマースへ軸足を移すだけだ。善意だけでは不十分なのである。本シリーズの後続回で見ていくように、このような世界で意義ある価値創造を実現するには、より深い変革が必要となる。

次回:第2回 シェイクスピア『ハムレット』でさえ、CEOが「価値創造」を理解する助けになる

forbes.com 原文

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