こんな面接の場面を想像してほしい。対面面接のために9時間のフライトで移動する。時差ぼけのうえ、さらに悪いことに水疱瘡にかかってしまった。どれだけメイクをしても顔の痕は隠せず、体調も最悪だ。これは1998年に私が実際に経験したことだが、そんな逆境にもかかわらず、私は内定を得た。実際、起業する前まで、面接を受けたポジションは100%の確率でオファーをもらってきた。たとえ悲惨な面接であっても、なぜ私はそこで力を発揮できたのか。その理由に気づき、言葉にできるようになるまで何十年もかかった。私の秘密は「本物のストーリーテリング」だった。ストーリーを通じて私は弱さをさらけ出し、本来の自分を見せ、面接官たちに純粋な興味を持って質問したのである。
この卒業シーズン、非常に優秀な何千人もの大学生が、勢いを欠いた雇用市場へと踏み出していく。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は退任前最後の記者会見で、「実質的に、純増の雇用創出はない」と述べた。「ある意味で労働市場は均衡しているが、それは異例で居心地の悪い均衡だ。職に就いていない人が参入するのは、誰かが仕事を辞めない限り難しい」
では、こうした競争の激しい雇用市場で、大学卒業者や転職希望者が、ようやく得た面接の機会に向けて確実に準備するにはどうすればよいのか。私の助言は、あなたが何者であるかを示す「本物のストーリー」を用意して面接に臨むことだ。ストーリーが「本物」であるとはどういうことか。本物のストーリーとは、弱さを見せ、本来の自分をさらけ出し、その場にいる他者に好奇心を向けられるものである。次の面接でストーリーテリングを活用する3つの方法を紹介する。
1. ストーリーテリングは「弱さ」を見せられる
面接準備は必須だ。「自己紹介をしてください」や「5年後の自分をどう描いていますか?」といった定番質問に対し、いくつかの回答を用意しておくのは重要である。しかし、練習しすぎて機械的に聞こえてしまうのは避けたい。面接官が知りたいのは、あなたが信頼できるかどうかだ。研究Personal Narratives Build Trust Across Ideological Divides(『How to Disagree Better』の著者であるミンソン博士と共同研究者による)では、弱さをさらけ出す個人的で本物のストーリーが、特に緊張感のある状況において信頼構築に最も効果的であることが示された。ここで本物のストーリーテリングが役に立つ。
一見すると、弱さを明かすストーリーは面接では避けるべきだと思える。こちらは最良の自分を見せたいのではないか。だがミンソン博士の研究では、「語り手を謙虚にするような行動や出来事を打ち明けるストーリーは、話し手を弱い存在に見せることで、信頼できるという認識を高める」ことが繰り返し確認された。
面接では、資格を誇示することよりも信頼を築くことのほうが重要だ。応募者が要件を満たしているかどうかは、面接官にとって判断しやすい。おそらくあなたは要件を満たしている。だからこそ面接に呼ばれているのだ。面接は、同等か、場合によってはそれ以上に有資格な候補者たちの中で、あなたが差別化を図る場である。信頼できる人だと示すことは、その有効な手段となる。時差ぼけで顔に痕が残ったあの面接で、私は弱さをさらけ出していた。彼らは、弱くもあるありのままの私を見た。隠すものが何もないと感じたからこそ、私は自然体でいられたのである。
水疱瘡にかかることは(意図せず)弱さを見せる1つの方法だが、私がおすすめしたいのは、むしろ自分がヒーローではない本物のストーリーを語ることだ。よくある難問として、「あなたの最大の弱みは何ですか?」という質問がある。これは弱さを見せる絶好の機会である。自分の本当の弱点を認識し、そのギャップを埋めるためにどのような行動を取っているかを示すストーリーで答えるとよい。
私の「IRSメソッド」を使えば、引き込まれる導入、目を離せない展開、納得感のある結末を備えた本物のストーリーを用意できる。数文で、面接官との信頼を築くストーリーを語ることは可能だ。
2. ストーリーテリングは「本来の自分」を見せられる
弱さを見せることと同様に、多くの候補者は、面接では洗練されプロフェッショナルであることを優先し、個性を隠すべきだと考えている。これは大きな間違いだ。企業が面接を行う理由の1つは、履歴書だけでなく、あなた自身を知りたいからである。一緒に働くとどんな人なのか? ユーモアのセンスはあるか。雑学に異常に詳しかったりするか。プロジェクトの締め切りというプレッシャーにどう反応するのか。
面接で本来の自分を見せるには、「自分らしさ」を際立たせるために、あえて違いを出すことを恐れないことだ。ここでも、短くても鮮やかな本物のストーリーが群衆から抜け出す助けになる。マラソンランナーなら、トレーニングから学んだことと、それが仕事の姿勢にどうつながるかを話せる。大学でコミュニティガーデンのトマト栽培をしていたなら、実るのを待つ中で身についた忍耐力を語ればよい。応募している職種と無関係に見える経験でも、共有することを恐れてはならない。人生の別領域で示してきた特性は、応募する仕事にも転用できるからだ。
3. タイミングのよい「ストーリーテリングの質問」で、本物の好奇心を示す
私がシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスで、入学管理の学部長と面接をしていたときのことだ。学部長は面接の冒頭で、学校の概要と、最近の資金調達キャンペーンが期限前に目標を達成しつつあることを少し話してくれた。成功が大きかったため、目標額を引き上げることにしたのだという。
私は純粋な好奇心から、この機会に質問を挟んだ。「それは素晴らしいですね。どういった点がこの成功につながったとお考えですか?」
この質問によって、学部長はキャンペーンを振り返り、資金調達の目的についてより深く語ることができた。面接は会話になり、私たちは信頼関係を築けた。学部長は成功談を話すことを楽しみ、私は将来の雇用主や同僚になり得る人たちについて理解を深められた。まさにウィンウィンである。
候補者だからといって、質問してはいけないわけではない。決められたQ&Aの時間まで好奇心を温存する必要もない。適切なタイミングで、関連性の高い質問をすることは、面接の場にいる他者にスポットライトを当てる優れた方法である。新著Winning Without Persuading: A New Framework for Leading with Curiosity and Story Discoveryでは、好奇心を「マインドセット」として捉えることで、チームや組織、そして自分自身のキャリアにおいて可能性と共感を引き出す力があることを明らかにしている。
さらに、面接のような高い緊張を伴う場面では、本物の好奇心を実践することで、自分の不安も軽減される。相手の人となりにより強い関心を向けていれば、自分の見え方や声の響きばかりを気にして過度に緊張することは難しい。質問によって好奇心を示すことは、あなた自身にも面接官にも安心感をもたらす。
厳しい雇用市場でストーリーテリングを使って面接準備をする方法
競争の激しい市場で仕事を得るには、資格だけでは足りない。決め手になるのは「つながり」である。本物のストーリーテリングは、そのために役立つ。弱さを受け入れ、ありのままの自分を見せ、面接を真の双方向の会話へと変えられれば、同等の資格を持つ候補者の中でも際立ち、前向きで温かな印象を残せる。厳しい雇用市場に踏み出す新卒者であれ、キャリアチェンジを図る経験豊富なプロフェッショナルであれ、これらの戦略は信頼とラポールを築き、面接を内定へとつなげる助けとなる。



