トランプ大統領の就任以来、欧州の防衛力に関する議論が再燃している。昨年6月にオランダ・ハーグで開催されたNATO首脳会議で、トランプ大統領は欧州の加盟国に対し、防衛費の増額を求めた。加盟国は国内総生産(GDP)の5%を防衛費に充てることで合意した。トランプ大統領はまた、米国が欧州に過度に関与していると主張し、これを縮小する意向を示した。これにより、欧州諸国は防衛関連投資の加速と産業基盤の強化に関する検討を迫られた。昨年12月には欧州議会が会合を開き、「防衛産業の迅速かつ効率的な製造」によって欧州の再軍備を目指す法案について議論した。だが、欧州の進展は遅々としている。
筆者の取材に応じた米テキサスA&M大学のアレクサンドラ・チンチラ准教授は次のように説明した。「欧州諸国は戦略的自律性の確立に向けて遅々とした歩みを続けているが、それは問題の規模があまりにも大きいためでもある。各国は通常戦力の規模を拡大しなければならないが、予算上の懸念や兵役に対する国民の関心の低さから、多くの国でそれが困難になっている。しかし、欧州防衛における米国の貢献を補うためには、欧州諸国は単に軍備増強に予算を投じるだけでは不十分だ。防衛政策を調整し、現在米国が提供している情報、空輸、後方支援、相互運用性の訓練といった高額な支援策にも投資しなければならない。これは困難な課題だ。というのも、単独ではロシアの脅威を抑え込むことができない小規模な軍隊同士の調整問題を解決する必要があるからだ」
米シンクタンク大西洋評議会の非常勤上級研究員であるジャスティナ・ブジナイテフローリー博士は筆者の取材に対し、現在の地政学的変化に対する欧州の防衛産業の対応は遅れていると指摘した。「防衛企業は依然として、製造上の障害、許可や認証手続きの遅延のほか、新たな製造ラインへの大規模な投資を正当化できるほどの長期的な需要の欠如といった問題に直面している。各国政府は支出を増やしているが、産業界には複数年契約や明確な優先順位、迅速な調達決定が必要だ。欧州の再軍備を目指す法案は、防衛資金調達と調整の問題を解決するための重要な一歩ではあるが、供給側の問題はまだ解決していない」
こうした課題があるにもかかわらず、NATOと欧州連合(EU)加盟国は、防衛投資と国家安全保障を優先する必要性を認識している。例えば、欧州の再軍備を目指す法案はEU加盟国に対し、防衛調達での連携を促そうとしている。他方で、こうした取り組みで欧州諸国が足並みをそろえるには時間がかかり、製造上の障害に直面している国もある。防衛専門家や政策立案者らは、欧州が安全保障に必要な集団的決意を構築できるかどうかを注視することになるだろう。


