映画

2026.05.25 15:15

カンヌ国際映画祭で、なぜ今「日本映画ブーム」が起きているのか

世界全体3割減、不況のなかで気炎をはくインディーな作品たち

映画産業自体は「不況真っただ中」と言わざるを得ない。2017〜19年の平均で70億人、361億ユーロだった映画市場は、2025年には50億人、295億ユーロと3割減となった。動画配信が映画に優先されるようになり、ハリウッドのストライキなどもあって、世界の映画市場が大きく混乱。日本だけがアニメブームもあり、“例外的に”映画興行が2019年の水準を上回っている。

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韓国は特にダメージが大きく、“半減して”6.5億ユーロにまで下がっている状況だ。興行を支えるファンダムの強さも、日本映画が相対的にそのポジションを高めている背景にある。作品数は減っていないのだ。3割減の市場のなかで配信・放送なども駆使しながら、厳しいはずのインディー映画が今回もカンヌでブレークスルーを起こしている。

もちろんよい映画をつくることは大前提だが、ただそれだけで7000作のなかから評議員の目にとまるわけではない。

『我々は宇宙人』は、創業2022年、メンバーが5人にすぎない映画製作スタートアップの林健太郎氏が4年かけて、出会った当時まだ25歳だった門脇康平監督と二人三脚で作り続けてきた作品だ。2024年に初めてカンヌを訪れた林氏とCOOの下條氏は、当時1分のティザー映像だけを携え、経由便の安チケットとAirbnbを駆使しながら(イベント期間は高騰しており、ホテルは1泊10万円、航空券は40〜50万円)、なんとか縁をつくりだしたことが今回に繋がった。

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映画祭参加者がアクセスできるリストや会社のHPから、会っておきたい企業の担当者を顔写真で覚え、パーティ会場で何度も人間違いをしながら直接声をかけまくり、カンヌ関係者や現在の海外パートナーと出会ったという。

カンヌ国際映画祭には完成前のバージョンで応募し、4月頭にノミネートの朗報を聞いたのは、ダビング(作品完成)の翌日だった。昨年は『国宝』が選ばれた名誉ある監督週間部門で、『我々は宇宙人』は世界で初めて上映された。JWマリオット地下の800人会場は埋め尽くされ、上映後には7分以上の間スタンディングオベーションが続いた。門脇監督にとって本作は初の長編アニメ作品。感涙しながらフランス語で称賛される姿に、初参加の私自身も震えるような感動を覚えた。

スダンディングオベーション受ける(左から)岡山天音、門脇康平監督、坂東龍汰
スタンディングオベーション受ける(左から)岡山天音、門脇康平監督、坂東龍汰

また『HIDARI』は、「木彫りの人形を使い、左甚五郎という伝説の彫刻職人の世界観で、ジョン・ウィックのような痛快リベンジ・アクションをコマ撮りで実現する」という大胆な発想から生まれた作品だ。

「こまねこ」「どーもくん」で知られるドワーフの松本紀子プロデューサーは、“コマ撮り”アニメ業界をもっと面白くしたいと、Whateverの川村真司監督とともに企画を始動。木彫人形造形にTECARATを巻き込んで『HIDARI』を制作し、2023年に5分のパイロット版を発表した。

次ページ > 本当の勝負はここから。

文・写真=中山淳雄

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