AI

2026.06.07 17:00

顔も声もしぐさも丸ごと企業にライセンス、インフルエンサーの「AIクローン」は誰のものか

stock.adobe.com

自分の動画さえ把握できず、生体データを守る法律もない

この変化がもたらす影響は、マーケティング効率の向上にとどまらない。知的財産権の帰属、本人の同意、労働の経済構造にまで及ぶ。「従来、クリエイターは自分のイメージを自分で管理できていた。自分の画像や動画が、想定していなかった場所で使われていることに気づいた場合、契約を見直すこともできたし、法的措置を取ることもできた」とマークランドは説明する。

advertisement

「だが、そこにAIクローンという新たな要素が加わると、クリエイターは、そもそもどんな画像や動画が作られているのかさえ把握できない可能性がある。本人は写真撮影に臨んだわけでも、動画を収録したわけでもない。それでも、より大きな契約の一部として、そうしたコンテンツが突然出てくることがある」と彼は続けた。

現時点で、規制はこうした変化に追いついていない。「欧州連合(EU)のGDPRは、個人データについて利用目的の明確な限定と本人同意を義務づけている。生体データにも同様の法律が整備されるまでは、クリエイターは自分が思っている以上に多くの権利を手放してしまうことになる」とマークランドは指摘する。

ブランド側も、AIで生成されたクリエイターコンテンツをどう運用し、ブランドイメージへの影響をどう管理するかを模索している。クリエイターキャンペーンにAIを組み込むマーケターにとって、AIガバナンス、真正性、ブランドセーフティが急速に重要な課題になっている。CreatorIQのレポート「State of Creator Marketing Report 2025-2026」が、その実態を示している。

advertisement

クリエイターの定義が、作る人から所有する人へと変わる

クリエイターエコノミーではこれまで、どれだけ多くの人に届くか、どれだけ安定して発信を続けられるかが価値の基準になってきた。AI時代には、権利の所在、視聴者からの信頼、契約上の管理権がより重視される可能性がある。「クリエイターの肖像が自律的にコンテンツを生み出せるようになるなら、クリエイターの定義は、何かを作る人から、コンテンツ上のアイデンティティを所有する人へと変わる」とマークランドは語った。

AI時代に最も有利な立場に立つのは、視聴者との関係が最も強いクリエイターだと彼は考えている。「次の10年で最も価値を持つクリエイターは、必ずしも最も才能がある人や、最も多くのコンテンツを作る人ではない。AIによって複製が容易になる前に、視聴者との深い信頼関係を築いた人だ」とマークランドは指摘する。

ブランドがAI生成のクリエイターコンテンツを大規模に展開しようとしている。インフルエンサーマーケティングの次の大きな争点は、配信力や収益化ではなく、クリエイターのデジタル上の分身を最終的に誰が所有するのかに移るかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事