サイエンス

2026.06.02 17:00

高所恐怖症の正体は「生存本能」、落ちた経験がなくても怖く感じる科学的理由

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ぞくっとするようなあの瞬間を、ほとんどの人は知っている。バルコニーに足を踏み入れた時。非常階段の手すり越しに下を見おろした時。あるいは、思った以上に高さがあったはしごに上って、下を見た時。胃が縮むような感覚とともに、手すりを握る手に力が入る──しかし、一歩後ろに下がれば、その恐怖は、わき上がってきた時と同じくらいすばやく消えていく。

危険な目に遭ったわけではない。それでも、律儀なほどに反応は表れる。まるで、体がそうした状況についての確固たる意見を最初から持っているかのように。

哺乳類生物学によれば、高所への恐怖心は実に古くから根深く組み込まれている反応の一つであり、研究者たちに言わせれば「進化的に保存されている」反応だ。つまり、何百もの種で、何千万年にもわたり、ほぼ損なわれずに受け継がれてきた反応なのだ。

その理由を理解するためには、この反応について、心理的な機能不全、とただ片づけるのではなく、別の角度から考察する必要がある。生物が初めて地面を離れ、高い場所へと上るようになって以来直面してきた現実的な問題に対処するための、見事な解決策としてとらえる必要がある。

言語や文化、記憶よりも古くから存在する恐怖

高所への恐怖心が、後天的に学んだものではないとする最も直接的な証拠は、人間ではなく、さほど学習能力が高くない動物に見いだすことができる。

1960年、心理学者のエレノア・ギブソンとリチャード・ウォークは、発達科学の分野で、後に最も有名な実験の一つとなった手法を考案した。それが「視覚的断崖」だ。仕組みはシンプルで、大きなガラス板を載せた大きなテーブルを用意する。そのガラス板の半分には、市松模様を直接貼り付け、残りの半分は、透明なガラス板から1mほど下の床に市松模様を描く。そうすると、突然床が消え、断崖から落ちるような鮮明な錯覚が生まれる。

この装置の中央に、生後6カ月から14カ月の乳幼児を座らせ、見せかけの断崖の向こう側から、母親に名前を呼んでもらった。すると、ほぼすべての乳幼児が、ガラス板を渡って母親の方に行くのを拒んだ。手でガラスの床を叩き、硬いことを確かめてもなお、先に進もうとはしなかった。危険に対する認識は、信頼する養育者の呼び声を拒絶するほど強かったのだ。

しかし、この実験を決定的に重要なものにしたのは、人間を対象にして得られたデータではなく、動物による実験データだった。同じガラス板のテーブルにヒヨコを置いて実験したところ、1羽たりとも、見せかけの断崖の方には踏み出さなかった。しかも、実験で使われたヒヨコの多くは生後わずか1日で、これまでに転落したことはないし、恐怖を覚える危険を連合学習で後天的に学んだということもあり得なかった。

子ヒツジとヤギで試しても、子ネコやラット、それ以外の動物で試しても、結果は同じだった。事前に、高い場所で嫌な思いをしている必要はなかった。高所を避ける仕組みは、動物の子どもが動けるようになった瞬間から働いていたのだ。

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翻訳=ガリレオ

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