
並行してVUILDは北米市場へも進出。NESTINGをベースとした住宅販売モデルのライセンス展開だが、円安もあり、日本発の知財に対して正当なリターンが返ってくるという見立てだ。米国では住宅問題が深刻であり、AIによる失職不安も広がっている。スキルのない若者でも少し学べば家づくりに関われる仕組みは、社会的な意義を持ち得る。
自らつくることが当たり前の世代を育てる
秋吉は、VUILDのインパクトを「Humanity=人間再生」「Community=地域再生」「Sustainability=地球再生」の3つの軸で整理し、それぞれに指標を定めている。人がつくる喜びを取り戻し、地域に誇りを取り戻し、CO2の削減や資源の循環で環境をよくする。単なる売上や施工実績だけでなく、建築が人、地域、地球に与えるポジティブな影響を可視化する取り組みである。
この姿勢は、創業時から掲げる「建築の民主化」とつながっている。ただし、その意味はピボットを経て拡張。かつては、個人が自ら家をつくることが中心だったが、現在は企業や地域、自治体、職人、住民など、多様な主体がデジタルを通じて建築に関わることへと、その射程は広がっている。

「法人で培った製造データベースやロボティクスを、個人向けのプラットフォームにも還元していければと考えています。さらに教育にも力を入れたい。約300台販売してきたショップボット(大型切削機)の約3割は教育機関に導入されています。自分で家具をつくったことがあれば、次は家や建物も自分で… …となっていくはず。教育はすぐに大きな収益にはならないけれど、将来的なインパクトを生む大事な領域だと思っています」
崖っぷちから約1年。VUILDはいま、木造建築、コビルド、AI、ロボティクス、地域活性化、環境負荷の低減、教育といった多様な要素を独自の思想で編み直し、建設産業そのものを更新する建築OSの構築へと歩みを進めている。


