「やるからには世界一を目指す」
グラングリーン大阪のベンチや、竹中工務店と連携した国分寺市役所の地域参加型什器など、代表的な事例が話題を呼び、日建設計をはじめとする大手設計事務所や建築関係者の関心を集めていった。
「個人向け住宅と比べると、利益率が高い。しかも、お客さんにとってはクオリティに対してリーズナブルだと感じてもらえる。ここに勝機があると思った」と秋吉は振り返る。
こうしてBtoCからBtoBへと大きく舵を切った タイミングで、同年9月には、現代美術家の村上隆、オイシックス・ラ・大地の髙島宏平、マネーフォワードの辻庸介らを引受先に、総額約2.3億円を調達。累計調達額は約12.5億円となった。
村上とはGinza Sony Parkで開催された「マガジンハウス博」内の展示企画「村上ハウス(Murakami House)」を一緒に制作し、現在はオーストラリアのプロジェクトでも協業する。
「村上隆さんは初対面のときに、出資したいんだけど、と言ってくれて。じゃあ、お願いしますと(笑)。やるからには世界一を目指そうという話をしました」
世界的なトップアーティストである村上の動き方を参考に、VUILDは秋吉がクリエイティビティを高め、それをテクノロジーで横に広げていくという体制を強化している。
非住宅木造という「1兆円市場」
BtoBへのシフトの効果は数字に如実に表れている。売り上げは前年比約150%を超える見込みで、来期はさらに伸ばせる道筋が見えている。
成長を牽引するもう一つの柱が非住宅木造建築だ。非住宅木造のマーケットは環境配慮や建築コストの高騰を背景に注目が高まり、2030年には1兆円規模になると言われている。
VUILDでは昨年、平和不動産と協業して日本橋茅場町に木造ビル「prewood(プレウッド)」を竣工。証券取引所を保有する不動産会社が木造に注目する背景には、ESG経営の観点から「建設時のCO2排出を下げたい」という明確な動機があった。
VUILDのデジタルファブリケーション工法は、躯体工事をたった2日で完了させることができる。すべての部材がデジタル加工され、ビスやボルトで接合されているため、移築や再構成も可能だ。
また三井不動産レジデンシャルとの協業プロジェクトでは、外部評価機関による検証の結果、建設時のCO2排出量をRC造と比較して41%削減できることが確認されている。
「現場での組み立て工数が減るから、全体工期も短くなる。さらに解体してもゴミが出ないという環境的な優位性も大きい。ESG意識の高い法人のニーズは、僕らの強みがマッチしています」


