シリコンバレーではAIを中心としたスタートアップが派手な注目を集め続けている。しかし今、アメリカではもう一つの大きな変化が静かに広がっている。それが「Reindustrialization(再工業化)」と呼ばれる動きだ。
前編では、米国中西部デトロイトにおける再工業化の動きを追った。
このデトロイトで、再工業化を背景に新しいエコシステムの構築に取り組むマイクロVCが640 Oxfordだ。同ファンドは、シリコンバレーの最先端スタートアップと、中西部の産業基盤をつなぐ「橋渡し役」として注目されている。
今回は、640 Oxfordの共同創業者であるブランドン・シュラムとアダム・ガーテンバーグに、再工業化の現状と今後の展望について話を聞いた。
「生産なきイノベーションは脆弱である」
吉川絵美(以下、吉川):今、特に中西部を中心として「Reindustrialization(再工業化)」の動きが盛り上がっていますが、特にデトロイトにおける直近の盛り上がりはどのように始まったのでしょうか?
ブランドン・シュラム(以下、ブランドン):2024年にデトロイトで始まったReindustrialize Summitというカンファレンスが一つのきっかけとなりました。最初は同じ志をもつ人たちの小さな集まりでしたが、今では起業家、投資家、政策担当者などが集まる一大ムーブメントになっていて、我々も中心メンバーとして活動しています。その背景にあるのは、「アメリカは長い間、製造を外部に依存しすぎていた」という共通認識です。
パンデミックによってサプライチェーンの脆弱さが露呈しました。さらに地政学的リスクも高まっています。そこで今、「もう一度、自分たちで作る力を取り戻そう」という流れが生まれているのです。
私たちはよくこう言います —「生産能力のないイノベーションは脆弱だ」
なぜ中西部なのか
吉川:再工業化の舞台として、なぜ中西部が注目されているのでしょうか?
ブランドン:理由は非常に現実的です。中西部にはすでに工業用土地、物流ネットワーク、サプライヤー、熟練労働力が存在しています。
多くの最先端スタートアップはサンフランシスコやニューヨークで生まれます。以前は製造を始める段階になると、中国など海外を検討していましたが、最近の地政学的な動きや米国の再工業化の流れによって、国内の製造拠点を模索するようになってきています。そこで中西部は強力な候補地となります。
実際、シリコンバレーのスタートアップが試作品を完成させた後、製造拠点として中西部を選ぶケースは増えています。



