ブランドン:私たちは、単につなぐだけでなく、製造への移行をハンズオンで支援しています。その基盤となっているのが、デトロイトのNewlabにあるBeacon Manufacturing Platformです。これは約20万平方フィートの製造キャンパスで、1940年代のスタンピング工場を改装した施設です。ここではスタートアップがプロトタイプ開発、小規模製造、実証試験を行うことができます。さらにAI企業がモデル学習を加速化させるために、実際の工場環境でデータを取得する場所としても活用されています。
640 Oxfordはこのプラットフォームを設立し、シリコンバレーなどの最先端スタートアップと中西部の製造業のスムーズな連携を実現しています。
吉川:出資先のスタートアップ企業には例えばどのようなものがありますか?
アダム:一つの例が、「Conduit」という会社です。Conduitは、ロボットやセンサー、各種機械を単一のコマンドセンターに接続することで、工場全体にわたるAI自動化を実現する相互運用型のオーケストレーションプラットフォームです。多くの製造現場では、いまだに機械がオフラインで管理されており、どこに問題があるのか、どの工程で効率が落ちているのかを即座に把握できないケースが多い。Conduitはそうした現場にソフトウェアのレイヤーを加えることで、生産性の向上や自動化の最適化を可能にしています。
ブランドン:もう一つの例としては「Aurelius Systems」があります。こちらはドローン対策用の小型レーザーシステムを開発している企業で、防衛領域と製造の両方に関わる、いわゆるデュアルユースのスタートアップです。高度なハードウェアを国内で製造するためのサプライチェーン構築にも取り組んでおり、デトロイトに製造拠点を構える構想も進めています。
アダム:私たちが共通して重視しているのは、「現場を理解している創業者」であることです。単に技術が優れているだけではなく、実際に工場や物流、建設の現場で働いた経験をもつ人たち。そうした創業者は顧客との信頼関係を築きやすく、製品の導入もスムーズに進みます。再工業化の文脈では、この「現場理解」と「テクノロジー」の融合こそが、最も大きな価値を生むと考えています。
日本企業にとっての大きな機会
吉川:このような再工業化の中で、日本企業にとってはどのような機会があると思いますか?
ブランドン:日本は、この動きにとって最も自然なパートナーの一国だと思います。理由は、日米両国の強みが補完関係にあるからです。
アメリカには、起業家、資本、イノベーションがあります。日本には、生産技術、品質管理、ロボティクス、精密製造などがあります。この組み合わせは非常に強力です。
アダム:忘れてはいけないのは、リーン生産方式は日本が生んだということです。トヨタ生産方式は、今や世界中の工場で使われています。本来、アメリカと日本はもっと協力すべきだったのです。
実際、ベンチャー投資額を見ると、アメリカは約2000億ドル、日本は100億ドル以下です。ベンチャー投資というアングルからも両国が連携できる可能性は莫大だと考えています。
新しい産業革命の入口
再工業化は単なる製造回帰ではない。AI、ロボティクス、先端素材などが融合した、新しい産業革命でもある。640 Oxfordはその入口に立っている。そしてその先には、日本企業にとっても大きな可能性が広がっている。
ブランドンは最後にこう語った。
「アメリカがスケールを、日本が生産の卓越性を提供する。その組み合わせが、次の産業時代を作ると思います。」


