ホーム・デポなどの大型量販店の棚には、黄色と赤の袋に入ったQuikreteのコンクリートミックスが並ぶ。米国のDIY愛好家や建設現場の職人は長年、郵便受けの支柱の固定や私道の補修、屋外用のベンチや階段作りなどにこれを使ってきた。この定番商品は、知名度がさほど高くない同社と、ブランドを支えるほぼ無名の一族に、数十億ドル(数千億円)規模の富をもたらした。
彼らが知る人ぞ知る存在だった時代は、終わったのかもしれない。非上場の建材会社であるQuikreteは2025年2月、競合の上場企業サミット・マテリアルズを115億ドル(約1.83兆円。1ドル=159円換算)で買収し、大きな注目を集めた。フォーブスは、この買収によってQuikreteの売上高が約50%増え、120億ドル(約1.91兆円)に達したと推定している。この買収によりアトランタに本社を置く同社は、フォーブス「米国最大の同族企業100社」で43位に入った。
フォーブスの推計に基づくと、Quikreteは米国で17番目に価値の高い非上場ファミリービジネスだ。創業家のウィンチェスター家は、Quikreteを実質的に100%所有していると見られる。同社の成長により、一族の資産は推定180億ドル(約2.86兆円)に膨らみ、彼らは米国有数の富豪一族となった。
メディアの取材にほとんど応じず、表舞台を避ける創業家
ジム・ウィンチェスターは、Quikreteで長年CEOを務めた。同社の創業75周年を記念する2015年のプレスリリースで、「我々は、建設業界と住宅リフォーム業界に変革をもたらした米国の家族経営企業としての歩みを誇りに思っている」と述べていた。「父のジーン・ウィンチェスターは創業初日から、請負業者と住宅所有者の双方のニーズに応えるため、公正な市場価格で最高品質の製品を提供することを使命としていた。その姿勢は今も、Quikreteの中核的な価値観であり続けている」と続けた。
同家は、Quikreteを築き上げ、現在も所有している。フォーブスの推計によると、Quikreteの価値はノードストローム、ワワ、コーラーといった知名度の高い家族経営企業を上回る。その価値を持ちながら、ウィンチェスター家はこれまで表舞台に出ることを避けてきた。
QuikreteのCEOは2020年以来、創業家以外の出身である元社長兼最高執行責任者(COO)のウィル・マギルが務めている。ジム・ウィンチェスター(82)は少なくとも2015年までCEOを務め、現在も同社の3人で構成される取締役会に名を連ねている。ジムの兄弟であるジャック(80)とデニス(77)も、取締役に加わっている。
ウィンチェスター家は、メディアの取材に応じることがほとんどない。ネット上で確認できる一族に関する情報も限られている。アトランタの高級住宅地バックヘッドの地域団体「バックヘッド・コアリション」での役職や、一族の母校であるクリーブランドのジョン・キャロル大学の理事会で現職・元理事として名前が挙がっているといった記録に限られる。
一族の名前は、連邦選挙委員会(FEC)の提出資料にも含まれている。そこには、主に共和党の政治家や政治委員会への献金が記録されており、最大の献金は、デニス・ウィンチェスターが2024年に「トランプ47委員会」に寄付した10万3000ドル(約1600万円)だった。Quikreteとウィンチェスター家の代理人は、フォーブスからの複数回の取材依頼とコメント要請に応じず、一族はプライバシー保護の観点から、「人物像を取り上げられることを望んでいない」と回答した。



