経営・戦略

2026.05.31 17:00

袋入りコンクリートと大型買収で2.8兆円超の資産を築いた、米国の非上場ファミリー企業

DylanHatfield.com - stock.adobe.com

2代目が1981年に経営を引き継ぎ、最大手メーカーへ育てる

デニス・ウィンチェスターと兄のジム、ジャックは、いずれも1965年から1970年の間にクリーブランドのジョン・キャロル大学を卒業し、後に同大学の理事に名を連ねた時期がある。ウィンチェスター兄弟は2014年、奨学金として100万ドル(約1億5900万円)を寄付した。その寄付の後に同大学が発表した報告書で、ジャック・ウィンチェスターはこう語っていた。「我々がイエズス会系の教育を受けられるように、両親はすべてを犠牲にしてくれた。今、我々兄弟はその恩を次の世代に送ることができる立場になった。だからこそ、母校に投資することは欠かせないと感じている」。

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ウィンチェスター兄弟はジョン・キャロル大学を卒業した後、1981年に父からQuikreteの経営を引き継ぎ、本社をアトランタへ移した。それは、ホーム・デポが同じアトランタで創業してから、まだ3年しかたっていない時期だった。1985年にQuikreteは、テレビと印刷媒体を使った大規模なマーケティング攻勢を強め、同社の黄色と赤のコンクリート袋を広く知られる存在へと押し上げていった。同社は初の企業スポークスパーソンとして、テレビ番組『アンディ・グリフィス・ショー』で知られ、エミー賞を5回受賞した俳優兼コメディアンのドン・ノッツを起用した。

ウィンチェスター家の2代目は、30年以上にわたり経営幹部として同社を率い、Quikreteを米国とカナダで最大の袋入りコンクリート・セメントミックスメーカーへと育て上げた。同社の製造工場の数は、2015年までに90カ所を超え、ウィンチェスター兄弟が経営を引き継いだ時点から3倍以上に増えた。Quikreteは、この分野で先行していたSakreteのような競合を上回る存在となった。

「Quikreteは、コンクリート製品としてはかなり早い段階で全国ブランドを築いた企業の1つだった。大型量販店や独立系の建材店、材木店を通じた流通網を持っていたためだ」。業界誌『Concrete Products』で長年編集長を務めたドン・マーシュはそう語る。「利益率が低い商品分野で、Quikreteは効率的な事業運営を早くから確立していた。大型量販店向けの供給力を生かして事業を広げ、袋入り建材以外の分野へ進出できる規模を築いたのだと思う」。

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買収攻勢で建材業界の圧倒的な存在へと変貌

ウィンチェスター兄弟は、2010年代初めごろから、Quikreteの商品構成の多角化にも乗り出した。買収先には、コンクリートブロックメーカーのBest Block、タイル・石材・床材を扱うCustom Building Products、アスファルト関連企業のQuality Pavement Repairなどがある。

Quikreteの買収攻勢は、直近の10年でも衰えていない。2016年には、プライベートエクイティの支援を受けていたContech Engineered Solutionsを11億ドル(約1749億円)で買収した。同社は、橋や擁壁、雨水管理・浸食対策システムなどのインフラを手がける企業だ。その1年後、Quikreteはメキシコのセメント大手CEMEXから米国のコンクリート管事業を約5億ドル(約795億円)で買収した。2022年には、水道・排水管大手の上場企業Forterraを27億ドル(約4293億円)で買収した。

約1.8兆円超の巨額買収でセメントなど原料製造に進出

次に手掛けた巨額の買収案件が、2025年に115億ドル(約1.83兆円)を投じたサミット・マテリアルズの買収だった。2026年2月には、上場する建材大手Martin Marietta Materialsとの間で約30億ドル(約4770億円)相当の資産を交換する、もう1つの大型取引を成立させた。

Quikreteは、直近の2つの取引によって、コンクリートの主要原料であるセメントや、石、砂、砂利といった「骨材」の製造にも進出した。同社は「レディーミクストコンクリート(生コンクリート)」事業にも乗り出した。

『Concrete Products』のマーシュはこう語る。「2010年以降の一連の買収によって、Quikreteというブランドは大きく変貌した。かつては利益率の低い汎用建材で強い企業だったが、今では建材業界全体を見渡しても圧倒的な存在になった。Quikreteは非上場企業だが、今では上場する競合のMartin Marietta、Vulcan、Amrize、CRH、Eagle Materials、Titan Americaと十分に肩を並べる存在になっている」。

自由の女神像や米連邦議会議事堂のドームなど、名所や施設で使われてきた建材

ウィンチェスター家は注目を浴びることを嫌っている。だが、Quikreteの建材は自由の女神像、米連邦議会議事堂のドーム、アルカトラズ島といった名所の修復に使われ、フェンウェイ・パークやジレット・スタジアムなどのスポーツ施設でも使用されている。アトランタのジョージア水族館の建設にも、Quikreteは600万ポンド(約2700トン)の資材を供給した。同水族館は、ホーム・デポ共同創業者のビリオネア、バーニー・マーカス(2024年死去)が主に資金を提供したものだ。

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翻訳=上田裕資

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