北米

2026.05.21 07:00

ウクライナからドローン戦を学ぶ米軍 中東に戦術拡散、不用意なイラン地上戦は損害必至

ウクライナ東部ハルキウ州クプヤンシク方面で2024年6月2日、FPVドローンの飛行訓練を行うウクライナ軍第116独立機械化旅団のドローン操縦士(Arsen Dzodzaiev/Global Images Ukraine via Getty Images)

「アウジーウカ以降、ウクライナはドローンの生産を本格的に増強し始めたように思います」とハルカビーは語る。「当時、ウクライナにもっと砲弾があれば、あれほどドローンに頼る必要はなかったでしょう」とも振り返った。

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いまでは、数百ドル程度の小型FPV(一人称視点)ドローンが数百万ドル相当の兵器を日常的に破壊している。2024年夏、前線近くでウクライナ軍の戦車部隊に同行取材した際、兵士たちはドローンの脅威のために戦車の運用方法が変わったと話していた。戦車は「機動砲」のように使われるようになった。掩蔽部から主砲で射撃し、射撃後はロシア側のドローンに発見されないように素早く移動する、という運用法だ。

アナリストたちは、こうした「コストの不均衡」を各国の軍隊も無視しがたくなっていると指摘する。

小型ドローンは、前線から遠く離れた地点を攻撃する能力も証明している。2025年6月、ウクライナは「クモの巣作戦」を遂行した。この作戦では、ロシア国内に密かに運び込んで組み立てた低コストのFPVドローンを使って、ロシア軍の1機数千万ドルないし数億ドルする複数の戦略爆撃機に打撃を加えた。安価なドローンは、前線をわざわざ突破しなくても、世界で最も高額な部類に入る軍事アセットを脅かし得るのだ。

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同様の構図はウクライナを越えて広がってきている。英紙ガーディアン(電子版)は5月12日、レバノンでイスラム教シーア派組織ヒズボラが300〜400ドル(約4万8000〜6万4000円)程度の光ファイバーFPVドローンをイスラエル軍に対して使用していると報じ、ヒズボラはイスラエル側の電子戦を回避し、格段に装備の整った軍隊に対抗するため、ウクライナの戦術を応用していると解説した。

英国の地政学リスク分析会社インサイト・フォワードのトレストン・ウィート最高地政学責任者は筆者の取材に「ウクライナとロシアはともに、比較的安価なドローンを大量に投入すれば、近代的な軍隊を相手にしても、防空を圧倒したり戦場の様相を左右したりできることを示してきました」とコメントした。

安価なドローン、高額な損失

問題の緊急性は米軍にも直接及んでいる。2月28日、米国によるイランに対する武力紛争が始まると、イランは域内各地に大量のドローンを発射した。米国と同盟国・パートナー国側は多くを撃墜したものの、その攻撃の規模は安価で大量生産されるシステムに対する防御の難しさを浮き彫りにした。

米シンクタンク、スティムソン・センターのノンレジデントフェロー、マクシミリアン・ブレマーと、同センターのシニアフェローでジョージタウン大学非常勤教授のケリー・グリーコは4月、外交・安全保障専門サイト「ウォー・オン・ザ・ロックス」に寄稿した論考で、イランの作戦を、米軍の航空戦力を支える基盤を狙った「非対称的な対航空戦」と位置づけた。安価なドローンやミサイルは、固定された基地に置かれる高価で代替困難なシステムを脅かす能力を高めてきているとも論じている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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