欧州

2026.05.21 07:30

イランとウクライナ両国の情勢から深刻なエネルギー危機に陥る欧州

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長。2026年4月15日撮影(Dursun Aydemir/Anadolu via Getty Images)

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長。2026年4月15日撮影(Dursun Aydemir/Anadolu via Getty Images)

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は4月、イラン情勢とウクライナ侵攻に起因する「エネルギー危機の最悪の事態を回避する」ための計画を発表した。同委員会は、本計画は原油価格の高騰や燃料不足の影響を受けている「欧州の家庭や産業に即時の救済をもたらす」と同時に、「欧州をエネルギー自立への着実な道筋に乗せる」ことを目的としていると説明している。さらに、現在の世界的なエネルギー危機は、欧州が「環境に優しく安全かつ手頃な価格のエネルギーへの移行」を加速すべきであることを改めて認識させるものであり、これは「経済的かつ安全保障上の必須事項」だとしている。

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は「欧州大陸は再生可能エネルギーへの移行を加速させなければならない」と強調。「これにより、エネルギー自立と安全保障が実現し、地政学的な嵐を乗り切ることができるようになるだろう」との展望を示した。

EUのダン・ヨルゲンセン・エネルギー担当委員は次のように述べた。「欧州はまたしても化石燃料危機に直面している。本計画を通じてわれわれは加盟国を支援し、社会で最も苦しんでいる人々への即時の救済措置を講じると同時に、再生可能エネルギーへの移行と電化への取り組みを強化する。これが、すべての欧州市民に安定的で、安全かつ環境に優しく、手頃な価格のエネルギー供給を保証する唯一の持続可能な方法だ」

EUはここ数週間、加盟国の市民に対し、ホルムズ海峡の封鎖により、欧州のエネルギー市場が「燃料消費の削減を余儀なくされる長期的な供給危機」に直面すると警告してきた。米イスラエル両軍が2月28日にイランを攻撃して以降、欧州はエネルギー価格の高騰に見舞われている。欧州のさまざまな企業が燃料不足を訴えており、航空便の削減は数千便に及んでいる。

欧州がエネルギー危機に直面したのは今回が初めてではない。2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始した際、EUは制裁措置として、ロシアからの原油と天然ガスの輸入を停止すると発表した。EUが主要なエネルギー供給源だったロシアからの輸入を断った結果、欧州ではエネルギー価格が上昇した。EUはエネルギー供給源の多様化を目指し、ノルウェー、米国、アルジェリアなどから石油、天然ガス、液化天然ガス(LNG)を輸入するとともに、風力や太陽光などの再生可能エネルギーへの投資も進めた。これらの措置はエネルギー危機を緩和する上で功を奏し、2025年12月には、EUはロシア産LNGの輸入を26年末までに段階的に廃止する計画を発表した。

ところが、26年2月末に米イスラエル両軍がイランへの攻撃を開始したことで、欧州は新たなエネルギー危機に直面した。欧州委員会は4月、ホルムズ海峡の封鎖による原油価格高騰により、EUはエネルギー輸入に240億ユーロ(約4兆4300億円)の追加支出を余儀なくされたと説明した。

筆者の取材に応じた環境保護団体クリーンエア・タスクフォース(CATF)のアレッシア・ビロネは次のように語った。「イラン情勢の悪化は、混乱が遠隔地で発生した場合であっても、欧州が依然として世界の化石燃料価格の変動にさらされていることを示している。石油やLNGは国際的に取引される商品であり、地政学情勢が不安定になると、欧州の電力、暖房、輸送、工業価格に即座に影響が及ぶ。単一の輸入相手国や燃料、技術への過度な依存は、地政学的危機の際に構造的な弱点を露呈することになるため、欧州はここから脱却する必要がある」

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翻訳・編集=安藤清香

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