欧州

2026.05.21 07:30

イランとウクライナ両国の情勢から深刻なエネルギー危機に陥る欧州

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長。2026年4月15日撮影(Dursun Aydemir/Anadolu via Getty Images)

EUのエネルギー政策に疑問を呈し、新たな措置を求める加盟国の首脳もいる。例えば、ハンガリーでは当時のオルバン・ビクトル首相が3月、欧州のエネルギー危機を緩和するため、EUはロシアに対する制裁を緩和すべきだと訴えた。4月にはスロバキアのロベルト・フィツォ首相も対露制裁の解除をEUに求めた。

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CATFのタマラ・ラグラシビリは筆者の取材に対し、次のように述べた。「中東欧諸国は財政余力が限られており、化石燃料輸入に長期的かつ過度に依存しているため、国際エネルギー市場の変動に左右されやすい。これらの国々の中には、過去20年間でエネルギー輸入への依存度が高まっている国もある。原油価格の高騰による苦境は確かに困難だが、エネルギーシステムを見直し、回復力を高める機会と捉えることもできる」

オルバン前首相やフィツォ首相の要求とは裏腹に、EUはロシアに対する制裁を維持する方針を固めた。さらに、その後の政治情勢の展開が、EUの姿勢を一層強固なものにした。4月12日にハンガリーで行われた議会選挙で、マジャル・ペーテル党首率いる新興野党「ティサ(尊重と自由)」が勝利し、同党首が首相に就任したのだ。マジャル新首相はEUとの関係を修復するとともに、ロシアの影響力を自国から排除する方針を示している。オルバン前首相が退陣したことで、EU内のフィツォ首相の孤立が一層鮮明になった。こうした一連の動きは、EUがロシアに対する姿勢を変えないことを示唆している。実際、EUは4月23日、ロシアに対する新たな制裁を発表した。

筆者の取材に応じた米ペンシルベニア大学のベンジャミン・L・シュミット博士は、EU当局者はこの新たな政治情勢を迅速に捉え、ロシアが制裁を逃れて原油を輸出するために編成した「影の船団」に対する措置の拡大を含め、同国のエネルギー資源に対する制裁を強化していくとの見方を示した。同博士はさらに、ホルムズ海峡で続く危機は、EUが対露制裁と並行して、エネルギー資源の代替供給源の確保に向けた取り組みを進めなければならないことを示していると説明した。「EUは、イランによるホルムズ海峡の封鎖によって失われたエネルギー輸入量を補うため、代替燃料の確保に向けた交渉を世界中で積極的に進めてきた実績に加え、同海峡の航行の自由を維持するために、軍事力を行使する必要が生じるかもしれない。欧州諸国はイラン情勢を『自国の紛争ではない』と主張するかもしれないが、紛争の影響を緩和することは欧州自らの安定のためにも不可欠だ。欧州の政界の一部では忌避されるかもしれないが、ホルムズ海峡の安全確保のために、米国とペルシャ湾岸諸国の行動を補完する軍事作戦が必要になる可能性が高い」

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EUがエネルギー政策の転換に着手しようとしている今、欧州の政策立案者や環境保護活動家、企業は、今回打ち出された計画が現在のエネルギー危機に効果的に対処できるかどうかを注視している。代替資源への移行には設備や技術を整える必要があるため、時間がかかるだろう。ホルムズ海峡の封鎖による原油価格の高騰に直面する欧州の人々にとって、EUが打ち出した新計画は歓迎すべき選択肢となるかもしれないが、エネルギー危機を根本的に解決するものではなく、長期的な措置となる可能性もある。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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