5月3日、ゴールドマン・サックスのパートナー、マーク・ウィルソンはこのAIサイクルにおける最も鋭い警告の1つを発した。顧客向けのリサーチノートで彼は、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタが現在、合計で営業キャッシュフローの100%を超える額をAIの設備投資に投じていると記した。2026年のハイパースケーラー(大規模クラウド基盤を提供する巨大IT企業)の設備投資は合計で6000億ドル(約95兆3000億円)超と見込まれ、2025年のおよそ4000億ドル(約63兆5000億円)から増加する。ウィルソンは、同社で最も著名なAI懐疑派となったアナリスト、ジム・コヴェロの見解を引き、こうした支出のいずれかが相応の商業的リターンに結びつくのかと問いかけた。
このノートは、MITの研究が示した「2025年に生成AIへ投資した企業の95%が金銭的リターンを得られなかった」という結果を受けた直後に出た。EY(アーンスト・アンド・ヤング)の並行調査でも、回答企業の99%がAI導入による金銭的損失を報告しており、企業あたりの平均損失は440万ドル(約6億9900万円)だった。ゴールドマンは、消費者の採用スピードについての見立てが誤っていたことは公に認めたものの、企業におけるROIがAI投資論の全体における最大のアキレス腱だという主張は、これまで以上の確信をもって維持している。
枠組みは明快だ。データも実在する。そして投資家に、正しい問いを投げかけている。AI製品を購入する顧客側がリターンを示せないとき、ハイパースケーラーはいつまで支出を続けられるのか。
ただし、ゴールドマンの分析には、彼らの数字の隣に置くことで結論を根底から変えてしまう「1つの数字」が欠けている。
その数字とは?
トークン価格は、2023年3月のGPT-4ローンチ以降、99%下落した。
GPT-4は入力トークン100万あたり30ドル(約4770円)、出力トークン100万あたり60ドル(約9530円)でローンチされた。JPモルガンの業界横断分析によれば、入力と出力の混在利用を織り込むと、当初の実質リスト価格はトークン100万あたり約37.50ドル(約5960円)に近かったという。現在、GPT-4.1 Nanoは入力トークン100万あたり0.10ドル(約16円)で動作する。Gemini 2.5 Flashは0.15ドル(約24円だ。DeepSeekのV3は0.014ドル=約2.2円)で、ローンチ時のGPT-4より約2000倍安い。Claude Sonnet 4.5は、入力トークン100万あたり3ドル(約477円)でGPT-4級の性能を提供し、80%の値下げとなる。
スタンフォードのAI Indexは、GPT-3.5に匹敵するモデルの推論コストが、2022年11月のトークン100万あたり20ドル(約3180円)から、2024年10月には0.07ドル(約11円)へ低下したと報告した。およそ2年で280倍の低下である。この軌道は以後も四半期ごとに続いている。
2023年にGPT-4で月1万ドル(約159万円)かかっていたワークロードは、商用タスクの大半で同等の性能を発揮するモデルなら、いまや200ドル(約3万1800円)未満で動く。知能の単位コストは、歴史上ほとんど例のない速度で崩壊し、なお下落し続けている。
こここそが、ゴールドマンの枠組みが織り込んでいないAIストーリーの部分である。



