ゴールドマンの枠組みが見落としているもの
ゴールドマンの主張は、独自の前提に立つかぎり構造的に筋が通っている。ハイパースケーラーがAIインフラに年6000億ドル(約94兆円)を投じ、そのインフラが可能にするAI製品から企業顧客がリターンを生み出せないのなら、設備投資サイクルは持続不能だ。やがてハイパースケーラーは支出を削る。設備投資に由来する収益源(エヌビディア、マイクロン、接続性のエコシステム)は打撃を受け、市場は再評価する。
この枠組みの欠陥は、現在のAIワークロードコストを固定的に扱っている点にある。固定ではない。
トークン価格が99%下がると、「AIは大規模展開するには高すぎる」という前提に基づくあらゆる事業分析は、一夜にして反転する。MITの研究が示した「企業の95%がリターンゼロ」という結果は、2024年から2025年初頭の価格での導入に基づいている。そうした導入の多くは、基盤となる計算コストが1桁下がっただけで、いまなら採算に乗るだろう。コストが原因でうまくいかなかった導入は、新たなコスト水準でも試みられ続ける。トークン100万あたり0.10ドル(約16円)で機能する導入は、30ドル(約4740円)で機能した導入とはまったく別物である。
これは、これまでのほぼすべての計算資源サイクルがたどってきたパターンだ。無線データ通信は当初、ぜいたく品として価格設定され、初期の普及は薄かった。価格が崩れると用途が続き、その上にモバイルインターネット経済全体が築かれた。クラウドコンピューティングも同じ曲線をたどった。最初の企業群は2007年の価格でAWSへの移行を試み、多くが失敗した。同じ移行を2014年、コストが10分の1になった時点で行った企業こそが、持続的なクラウドネイティブ企業を築いた。コスト低下は既存市場を広げただけではない。まったく別の市場を生んだ。
2026年2月に公表されたサンフランシスコ連銀の研究は、電化に関する経済学者ポール・デイビッドの枠組みを引き、明示的にこの類比を示した。1900年に電動モーターを導入した工場は、旧来の工場アーキテクチャを維持したため、生産性向上は取るに足らなかった。変革的な成果は、安価な電力が可能にするものを前提に工場レイアウトが全面的に作り直された1920年代にもたらされた。欧州中央銀行も2026年3月、エリック・ブリニョルフソンの「生産性Jカーブ」をめぐり同様の議論を持ち出している。


