サイエンス

2026.05.22 15:00

なぜ人はくすぐったいと笑ってしまうのか?2500年来の謎に迫る最新研究

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いま、自分で自分をくすぐったとしても、何も感じないだろう。しかし、ほかの誰かが自分をくすぐっている、と想像したらどうだろう。あなたは突然、身をよじり、息を切らし、思わず笑い声を上げ、やめてくれと懇願しながらも、どこかやめてほしくないという気持ちを抱く。

くすぐったくて抑えきれない笑い、愛おしくもあり憎らしくもある感覚、他者からしか得られない触れ合い――このパラドックスは、子ども時代はもちろん、大人になってからも、誰もが経験する身近なものだ。それはまた、神経科学において最も不可解な謎の一つでもある。

ソクラテスは、この感覚について思索をめぐらせた。アリストテレスもベーコンも、ガリレオもデカルトもダーウィンもそうした。2500年ものあいだ、人類の好奇心を掻き立て続けてきた疑問なのだから、すでに確固たる答えが出ているだろう、と思われるかもしれないが、実際にはそうではない。そして最近の研究は、我々の知識におけるこの困惑するような空白を、見事なまでに浮き彫りにしている。

最新研究によって明らかになったことは他にもある。くすぐったさは、神経系に生じる「ありふれた気まぐれ」などではなく、脳がどのように社会的経験、感情、そして自己を構築するかという、最も根本的な問いへの入り口であることが分かってきたのだ。

人間がくすぐったさを感じる2つの方法

くすぐったさの説明を始める前に、何十年にもわたって科学を混乱させてきた、定義上の混同を解きほぐす必要がある。実は、「くすぐったさ」という同じ名称の下で、まったく異なる二つの現象が存在しているのだ。

一つ目は「クニスメシス(knismesis)」だ。これは、何かが肌に触れたときに感じる、軽やかでふわっとした、「こそばゆい」感覚を表す。腕の上に抜け毛が落ちた時や、首筋にハエが止まった時の感覚を想像してみてほしい。この感覚は、笑いたくなるというよりは不快なもので、自ら引き起こすことも可能であり、そうなった進化的な理屈は明白だ。それは、寄生虫や昆虫に対する、身体の早期警戒システムなのだ。

馬が、ハエを追い払うために尻尾を振る様子を目にしたことがあるだろう。それは「クニスメシス」が働いている瞬間だ。これは太古から存在し、哺乳類に広く見られる現象であり、神経学的にはごく一般的な動きだ。

二つ目は「ガルガレシス(gargalesis)」。誰かが、脇の下や脇腹、足の裏にリズミカルで強引な力を加えた時に生じる、社交的で笑いを誘うくすぐったさだ。ガルガレシスは、思わず笑いがこみ上げたり、体が痙攣したり、喜びと軽いパニックが入り混じった独特の感覚を引き起こしたりする。自発的にこれを引き起こすことはできない。それは、状況や気分に左右され、社会的な要素が強く絡んでいる点で、クニスメシスとは根本的に異なる。

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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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