資産運用

2026.05.27 18:15

バフェットやソロスら偉大な投資家たちに共通する『納得の習慣』

阿部はリンチから「私の平準化のフレームワークで条件を満たす日本株があったら、教えてほしい」とも言われていた。

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「そこで僕が提案したのが中小型の損保会社の銘柄でした。もち合い株に大きな含み益を抱えながら、それが株価に反映されていなかったからです」。阿部がボストンからニューヨークのオフィスに戻ると、大騒ぎになっていた。

「僕が推奨した銘柄にリンチがすぐに大量の買い注文を入れたのです。日本の感覚とはケタが違いますよね。自分のフレームワークに従って“行ける”と判断した場合は、極めて大胆にベットする──それがリンチ流でした」

3年後、野村から独立した阿部が出会ったのが、ジョージ・ソロスである。

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「自分が温めていた投資のアイデアをレポートにまとめて、著名な投資家に軒並み送ったんです。ほとんどが無反応でしたが、そのなかで唯一『会おう』と言ってくれた投資家がソロスさんでした」

レポートのタイトルは「Takeover Opportunities in Japan(日本における好機を見逃すな)」。そのレポートで阿部は、日本の私鉄各社が沿線に膨大な不動産を所有しており、その含み益(時価と簿価の差)に比べて株価が著しく割安である、と指摘したのである。85年12月、阿部はマンハッタンの古いビルにあったソロスのオフィスを訪ねた。自ら出迎えたソロスの頭はボサボサで、セーターの袖がほつれていた。

実はその3カ月ほど前、ソロスの投資家人生をかけた“大勝負”があった。85年9月のプラザ合意を見越して、ソロスは「円買い、ドル売り」のポジションを大量に構築。その結果、ソロスの資産は一気に約10億ドルに達したのである。

リンチの「平準化」と同じく、ソロスにも独自のフレームワークがあった。それが価格決定のメカニズムを示した「再帰理論(The Theory of Reflexivity)」である。「経済学の教科書では、価格というのは需給の均衡点とされますが、ソロスさんは『そうではない』と。『価格というものは人々の認識によって決まり、その価格がまた人々の認識を変えていくという自己強化的なループのなかで形成される』というのが彼の理論の骨子です」

ソロスは「強い通貨の国の資産は上がる」と言い、為替の勝負に勝った彼が次に仕掛けようとしていたのが日本株だった。そこに阿部のレポートが届いたのだ。初対面の場で、あらためて2時間にわたって阿部のアイデアを聞いたソロスは、その場で阿部をファンドマネジャーとして採用。阿部は翌日から1億ドル(当時のレートで約200億円)で日本株の運用を任されることとなる。ソロスが求めるレベルは高かった。

「事あるごとに“What do you think(お前はどう思った)”と聞かれます。例えば誰かと会った後で車に乗り込んだ途端に“What do you think”が飛んでくる。そこで的外れなことばかり言って、クビになった人を何人も見ました」

ある日、阿部はロンドンに出張中だったソロスに呼び出された。ヒースロー空港から駆け付けると、ソロスは阿部にこう言った。「この日本の鉄道会社が所有する土地の含み益が本当にお前の報告通りなのか、今から日本に行って調べてこい」

ジョージ・ソロス|クォンタム・ファンド創業者

生年月日:1930年8月12日
投資哲学:もっともらしい話は疑ってかかれ、予期せぬことに賭けるべし。
投資実績:ユダヤ系ハンガリー生まれで、グローバル・マクロとよぶ手法を中心に大規模なヘッジファンド運用で財をなした著名投資家。2013年には、円相場で円安に賭け40億ドルも個人資産を積み上げ、ヘッジファンド・マネジャーの長者番付1位に躍り出た。ソロスの投資は自身が考案した「再帰性理論」(市場にはフィードバックループが存在し、投資家が株価上昇を追い求めればバブルが生まれる)に基づく。

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文=伊藤秀倫 イラストレーション=フィリップ・ペライク

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