テクノロジーの世界において、パラダイムシフトの兆候は常にインフラストラクチャーの変革から現れる。
筆者は米国時間5月19日・20日に開催されたグーグルの年次開発者会議「Google I/O 2026」を現地で取材した。初日に行われた基調講演の発表内容を俯瞰すると、グーグルによる生成AIの開発フェーズがこれまでの技術的な可能性の模索から、社会基盤としての本格的な実用化へと完全に移行したことが見えてきた。
ユーザーのため24時間365日働けるAIをつくる
これまで市場の関心は、いかに巨大でありながらスマートな基礎モデルを構築するかという「AIモデルの開発競争」に集中していた。
しかし、今回のGoogle I/Oのキーノートにおいて提示されたのは、構築された知性をいかに効率的、かつ大規模に、そして24時間365日休むことなく社会システムの中で継続的に稼働させるかという、実運用を見据えた構造改革の形だった。
生成AIは、もはやビジネスや生活の現場で本格的に使用される時代へ突入した。その変化の底流にはコンピューティング基盤からアプリケーション層にいたるまで、包括的なアプローチがある。
この構造変化を最も象徴しているのが、グーグルが明らかにしたインフラへの巨額な投資の実績と、新型カスタムシリコンの戦略だ。
同社は2022年時点で310億ドル(約4兆9300億円)であったインフラなどへの投資を、今年度には約6倍となる1800億〜1900億ドル(約28兆6000億〜約30兆2000億円)規模にまで拡大する計画を発表した。この巨額の資本投下の中心にあるのが、今年の4月に開催したGoogle Cloud Next 26のイベントで全貌が公開された、最新第8世代のカスタムシリコン「TPU 8シリーズ」だ。
新世代のTPUにおいて最も注目すべきは、トレーニング向けの「TPU 8t」と、推論処理に特化した「TPU 8i」という、それぞれに得意分野を分けて最適化した第8世代TPUの2本柱として位置付けられていることだ。
米グーグルの最高経営責任者(CEO)であるスンダー・ピチャイ氏は、このインフラ変革の意義についてGoogle I/Oのキーノートスピーチで次のように述べている。
「私たちはAIの革新に対して、深く差別化されたフルスタックのアプローチをとっています。カスタムシリコンや安全な基盤から、世界クラスの研究とモデル、精度を求めた製品やプラットフォームにいたるまで、このアプローチが開発全体のあらゆる部分を活性化させている」のだと、その独自性を強調した。



