優秀な社員は格差是正の遅さに憤る
企業が賃金格差の是正にどれだけ迅速に対応するかは、格差の大きさ以上に重要になり得る。HBRの調査が示すとおり、企業が既存従業員の賃金を見直すのにかかる月数が増えるほど、その従業員が在籍する期間は短くなる。
この時間軸は、優秀な社員が常に即時の昇給を求めているわけではないことを示唆する。彼らが見ているのは、企業が格差を認識し、行動に移すかどうかだ。迅速な調整は、経営陣が状況を把握しているというサインになる。逆に言えば、対応の遅れは不公平の解消がその企業の優先事項ではないと捉えられかねない。
年次評価サイクルや長期化しがちなパフォーマンス管理プロセス、固定化した報酬体系は、いずれも対応を遅らせる。HBRの研究者は、善意のマネジャーであっても、より機動的なツールとプロセスがなければ優秀な社員を引き留めるのに十分なスピードで動くのは難しい、と指摘している。
賃金の不公平は優秀な社員の信頼を損なう
賃金の決定は、企業と従業員の単なる取引ではない。企業が何を重視しているかを示すサインでもある。雇用主が新たな人材を高い給与を条件に採用し、一方で既存従業員が昇給を待たされると、優秀な社員はそれを「忠誠心よりも外部での交渉力のほうが価値がある」証拠と捉えるおそれがある。
HBRの研究者は、賃金格差が継続すると、リーダーシップへの信頼が大きく損なわれることを明らかにした。不公平に扱われていると感じる従業員は、企業が下すほかの判断にも疑念を抱き始めるかもしれない。士気は下がり、責任感は弱まり、外部の機会がより魅力的に映るようになる。
優秀な社員にとって、この信頼低下のコストはとりわけ大きい。彼らは往々にして企業の存在意義への関与が最も強く、高めの目標に挑戦する意欲も高く、社内で事業を支持する可能性も高い。信頼が崩れれば、企業と従業員の絆もまた失われていく。
優秀な社員の退職は波及する
優秀な社員の退職が単独で起きることは稀である。HBRの調査は、最初の退職がもたらす影響も指摘する。高い成果を出してきた同僚が意欲を失ったり退職したりするのを目にすれば、他の従業員も自分の将来を会社でどう描くべきか疑問を抱き始めるかもしれない。
より高給の新規採用者によって、自らとの対比は見過ごせなくなる。彼らの入社は、転職が常に選択肢であることを既存従業員に思い起こさせ、自身の満足度を再評価するきっかけとなる。


