マーケティング

2026.05.25 18:45

「CMOは必要か?」 AI時代のマーケティング新潮流

イラストレーション=ジャック・デーリー

イラストレーション=ジャック・デーリー

5月25日発売のForbes JAPAN 2026年7月号の第二特集は「経営とマーケティングの新しい関係性」。

AIとデータ活用の進化によって世界中でCMOの役割やマーケティング組織が変化し、大きな転換点を迎える今、経営とマーケティングの新しい関係性とは。マーケティング志向が不足している日本においては、高度経済成長期から続く組織の見直しが迫られているのではないかーー。有識者へのインタビューから紐解く。

本記事は本特集内レポート記事の一部転載である。

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マーケティングは経営の一部か、経営「そのもの」か──。

AI時代に突入した今、企業の顧客接点や組織のあり方が大きく変わり始めている。その象徴的な動きが、世界的企業によるCMO(最高マーケティング責任者)ポストの再編だ。米国では、コカ・コーラ、マクドナルド、ジョンソン・エンド・ジョンソン、スターバックスなど大手企業で、2017年ごろから相次いでCMOポストが廃止された。

CMOは10年代以降、広告・宣伝だけでなくマーケティングテクノロジーを活用したデータ収集・分析や顧客体験(CX)の向上、それらに紐づいて売り上げ成長も求められるようになった。さらに20年代にはAIの台頭によりこの動きが加速。CMOの役割がより経営に近づいたことで、「CMO」という肩書きは最適ではないと判断する企業が増加した。これにより、売り上げ責任を明確にしたCGO(最高事業成長責任者)やCRO(最高収益責任者)などの役職にアップグレードしたケースもある。

では本当にCMOは不要なのか? 実は、コカ・コーラは3年後、マクドナルドは1年後にCMOを復活させている。ただしその役割は従来と異なり、前者ではデータ活用や顧客理解、マーケティング変革までを統括する役割へと再定義され、後者でも新規事業やデジタル領域を含めたより広範な役割を担うようになった。

米フォーブスが12年から実施している「世界で最も影響力のあるCMOリスト」でも、こうしたトレンドを踏まえてCMOという肩書にとらわれずに「ブランドとビジネスに対して最大の影響力をもつ人物」を軸に選出。25年はアスミタ・ドゥベイ(ロレアルグループ 最高デジタル&マーケティング責任者)やデヴィッド・サンドストローム(Klarna CMO)などマーケティング戦略へのAI実装の責任を負うリーダーも注目されている(本誌P70~)。

企業価値を高めるCMO

こうした米国の動きがあるなかで、日本の経営者はマーケティングとどのように向き合っているのだろうか。日本のマーケティング課題を解説した書籍『ザ・マーケティング・イシュー』(26年、日経BP)の編著を担当した中央大学名誉教授の田中洋は、「そもそも日本の企業にはマーケティング志向が不足している」と話す。田中の調査によると、日本の上場企業のCMO設置率は、役員レベルのCMOに限ると7.9%、マーケティング部長や本部長なども含めた「広義のCMO」でも約11.3%。米国の66%(Source:フォーチュン500企業)と比べると大幅に少ない。

「マーケティングは、広告・宣伝、PR、営業、マーケティングリサーチなどさまざまな機能を内包しますが、日本の多くの企業には、そういった機能を分散させておいても構わないという判断があるのではないでしょうか。それらを束ねる人(CMO)がいないから、会社のリソースも分散してきた」(田中)

これには、日本に営業中心主義の企業が多いことが関係している。高度成長期に成功したプロダクトアウトの文化がバブル崩壊後も根強く残っており、マーケティングが発展してこなかったのだ。また、買い手側が営業(人間)による説明と関係性を求めているという市場全体の慣習も影響している。

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文=田中友梨

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