ガブリエル・シデレはFlorida Wellness Companyの社長であり、リーダーの戦略立案、変革への対応、レジリエントな組織構築を支援している。
率直に言えば、世界はいま厳しい局面にある。国際的な不確実性は、国境を越えた取引、制裁へのエクスポージャー、資本流入、そして全体的なリスクといった形で波及し得る。港湾、パイプライン、決済ネットワーク、通信といった要素は、一般にグローバルなEコマースを支える安定した歯車と見なされてきたが、これらも地政学的緊張の影響を受けている。
貿易ルートの分断が珍しくない世界に、我々は生きている。ある日目覚めると、サプライラインを引き直す必要に迫られていることがある。銀行システムは地政学的圧力をかけるための手段になり得る。市場アクセス、規制、国境を越えたオペレーションの構図は、急速に変わり得る。
ビジネスリーダーにとっての核心的な問いは、国際情勢の変化が自社に影響するかどうかだけではない。それらに対し、迅速に、首尾一貫して、目的意識をもって対応するための戦略が用意されているかどうかである。
多くの人が問いを取り違える理由
地政学的な変化が起きると、リーダーは本能的に次のようなオペレーション上の問いを立てる。どのサプライヤーが影響を受けるか? サプライラインは大きな混乱に見舞われるか? 自社の事業の一部は制裁の対象範囲に入るか? 市場アクセスは脅かされるか? 輸送ルートや決済フローはどうなるか?
これらの問いは当然、問われなければならない。しかし私の見立てでは、これだけでは組織の結末を左右しない。重要なのは、組織にとって何が変化しているのかを実務的に把握すること、その変化が事業にとって何を意味するのかを理解すること、そして現在の成長戦略がその変化に対処できる設計になっているかを見極めることでもある。
もし組織がこうした問いを立てなければ、株主、パートナー、従業員、顧客が代わりに問うことになる。したがって、リーダーシップがそれらの問いに明確に答えられるよう、先手を打つ必要がある。つまずきや取りこぼしは情報不足ではなく、情報を理解しきれないことから生じる。
答えの1つ:「センスメイキング」
新しい用語が次々にマネジメントのバズワードの装いで現れる時代にあって、いわゆる「センスメイキング」を単なる流行語として片付けるべきではない。本質的には、言葉が示すとおりの意味である。センスメイキングとは、新たな動きにまとわりつく曖昧さのベールをリーダーが取り払い、ステークホルダーが何が起きているのかについて合意に至り、組織があらかじめ定めた目標群に沿って首尾一貫した対応を取ることを助けるプロセスである。
組織の戦略能力という観点から言えば、センスメイキングは最も軽視されている能力かもしれないと私は考えている。
1月のEYの調査では、CEOの40%が地政学的要因や通商政策の変化を受けて投資を加速させたとされた。だが真の差別化要因は、組織が変化をどう解釈するかにある。混乱のなかで機会をつかみたい人にとって、センスメイキングは、その到達を後押しする重要な駆動力になり得る。
センスメイキングは予測と混同してはならない。特定の国際情勢がどう展開するかを、リーダーが言い当てることを求めない。むしろ、変化する事業環境(とりわけ自社が事業を行う地域)と着実に足並みを揃え、シグナルを収集し、行動につながる形で解釈することに重きがある。
多国籍企業のリーダーに求められる3つの要諦
「読み解く」プロセスは、3つの中核的な柱に支えられている。
1. 組織としての筋力を鍛える
法務、オペレーション、財務、セキュリティ、戦略の各チームは、共通の価値観またはプラットフォームのもとに結集しなければならない。この部門横断のフォーラムは、新たな動きとそこから立ち上がる主要なシグナルを継続的に監視し、意味づけを行い、オペレーションへの影響を評価する。フォーラムは予測をしない。場の空気を先読みする習慣を組織に根付かせるのである。
ここでのセンスメイキングは比較的穏やかな水面で行われる。しかし、水面が荒れ、混乱が避けがたく現れたとき、組織は対応できる状態になっている。
2. ノイズとシグナルを見分ける
地政学的事象の戦略的な重みは、それぞれ異なる。効果的なセンスメイキングとは、優先順位を付け、即時の注意を要する事象と、監視は必要だが反応は不要な事象を見分けることだ。すべての見出しをリスクと見なしていては、リソースが薄く広がる。一方で、すべてのシグナルを危機に転じるまで退けていれば、組織は不意を突かれる。
センスメイキングはバランスの技であり、深刻または高インパクトな結果につながり得るシグナルを確実に拾い上げるために、常に微調整し続けなければならない。
3. 物語を設定する
国際的な混乱は、情報の空白を生み出し得る。組織が混乱をどう管理する構えなのかを伝え損なえば、投資家、アナリスト、メディアがコミュニケーションの隙間を埋めようと殺到しかねない。ナラティブの主導権を失うことは、組織が操縦者と筋書きを失ったように感じられるだろう。
早く、明確に、そして誠実に伝えるべきである。これは単なる広報の取り組みではなく、変化を先回りして自信をもって解釈する組織の能力を打ち立てる戦略的行為である。
センスメイキングは、次の時代のリーダーシップを規定し得る能力だと私は考えている。国際的なボラティリティは、近い将来に消えることはない。競争優位を実現するには、進行する地政学的シナリオとその影響(正負双方)について、組織として共有された理解を築かなければならない。これはセンスメイキングによって可能になる。センスメイキングは必要不可欠な規律として位置付けるべきである。



