経済・社会

2026.05.23 07:00

中国が購入を見送った75万基のAI半導体──なぜエヌビディアに「追い風」となるのか

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中国製チップはまだ不足分を埋められない

もう1つの論点は、ファーウェイ(華為技術)とSMIC(中芯国際集成電路製造)が、5月14日の取引が満たすはずだった需要を吸収できるかどうかである。正直にいえば、一部は可能だが、大半は無理であり、すぐには難しい。

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目立った進展があるのは事実だ。SMICが7ナノメートルのN+2プロセスで製造するAscend 910Cの歩留まりは、2024年後半の約20%から2025年初めには約40%へ上昇し、このラインは初めて採算に乗った。ファーウェイは業界標準に達するため、歩留まり60%を公に目標としている。Cambricon(カンブリコン)も並行して増産を進めている。ファーウェイのAIチップ売上は、2026年に約120億ドル(約1.91兆円)へとほぼ倍増する見通しである。

しかし、生産量の差は歩留まりの数字だけでは埋まらない。中国のハイパースケーラーによる2026年のAI設備投資需要は、最先端級アクセラレーターで数十万基規模に達する。ファーウェイのAscend系列全体は、年間で約160万枚のダイが見込まれている。これに対する市場には、首脳会談で承認されなかった75万基のH200に加え、新たな枠組みが存在する以前から中国のハイパースケーラーがエヌビディア経由で吸収していた需要増も含まれる。バイトダンスが2024年に購入したファーウェイのAscend 910Bチップ10万基については、昨夏時点で納入済みは注文の約30%にとどまっていた。特に広帯域メモリーを中心とする上流工程の供給制約が原因だった。

国内供給企業は急速に改善している。しかし、最先端クラスを十分な量で供給するにはなお遠く及ばない。これはエヌビディアの問題ではない。中国のハイパースケーラーの問題である。

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投資家が読み取るべきこと

注目すべきシグナルは、首脳会談の舞台演出やそれをめぐる発言ではない。世界の最先端計算資源はなお供給不足にある。ハイパースケーラーと国家主導の設備投資は、まだ存在しない能力に対して今後何年分も約束されている。そして、5月14日の許可枠に名目上振り向けられていた供給は、待ち続けていた列に吸収される。

中国が最先端計算資源を大規模に輸入できず、かつまだ大規模に自国生産もできない世界で恩恵を受ける企業は、すでに世界のAIインフラ整備を担っている企業と同じである。エヌビディアは、行き先を変えたH200のすべてについて、すでに待機していた国家需要またはハイパースケールの買い手を見つけられる。

ブロードコムは、グーグル、メタ、クラウド大手のカスタムASIC(特定用途向け集積回路)計画が、交渉可能な貿易品ではなく、北京の税関も通らないため恩恵を受ける。ケイデンス(Cadence:半導体設計ソフトの最大手)とアーム(Arm:CPUの基本設計をライセンス提供)は、どちらの道筋に資金が向かう場合でも、あらゆる先端チップ設計の中核に位置している。

世間の注目は首脳会談に集まった。だが投資家が見るべきは、受注残だ。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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