経済・社会

2026.05.23 07:00

中国が購入を見送った75万基のAI半導体──なぜエヌビディアに「追い風」となるのか

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縮まらなかった世界の需要の列

中国を除く世界では、2024年以降、最先端チップの配分が供給不足に制約されてきた。マイクロソフトの2026会計年度の設備投資見通しは1900億ドル(約30.21兆円。1ドル=159円換算)である。メタは1300億ドル(約20.67兆円)の投資を約束している。オラクルのRPO(残存履行義務)は5000億ドル(約79.5兆円)を超えており、アルゴンヌのスーパーコンピューターとスターゲートの建設計画がその土台になっている。ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の買い手は、数四半期に及ぶ順番待ちのなかでエヌビディアへの注文を消化してきた。需要が緩む兆しはない。

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もう1つの柱は、国家主導の需要である。この需要は、報道が追いつかないほど速く拡大している。カナダは4月、カーニー政権の下で1兆ドル(約159兆円)規模のAIインフラ構想を発表した。アラブ首長国連邦(UAE)のMBZUAIとG42は、引き続き割り当てを拡大している。サウジアラビア、インド、そして欧州の複数の国家AIプログラムも、十分な速さでは満たされていない注文残を抱えている。これらの買い手はいずれも、5月14日の許可枠によって名目上は中国のハイパースケーラー向けに振り向けられた、まさに同じチップを待つ列に並んでいた。

中国向けリストのために理論上確保されていたH200の在庫は、現在遊休化するわけではない。次に順番を待っていた割り当て先へ移るだけである。

エヌビディアの基準線は変わっていない

首脳会談を狭く読めば、エヌビディアは輸出枠を失ったことになる。構造的に読めば、その枠は、もともと中国を除外していた基準シナリオの上に乗った上振れ要因だったことになる。

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エヌビディアは2024年10月の輸出規制強化の時点で、中国向けの公式な売上比率を約95%からほぼゼロへとすでに引き下げていた。かつて売上の13%を占めていた中国分は、1年以上前から同社の事業モデルから外れている。5月14日に認められた75万基のH200許可枠は、下限ではなく楽観シナリオだった。5月15日の動きによって、この楽観シナリオは「あり得る」から「少なくとも今四半期はない」へと変わった。基準線は揺らいでいない。

ウォール街が織り込んでいるずれは、政治的に目立つ取引が失敗したという報道と、変わっていない実際の需要構造との間にある。AIインフラの中心企業の株価が政治要因で弱含んでいるのは、首脳会談という舞台演出の結果である。供給企業の行動や、ハイパースケール顧客の設備投資が変わったためではない。

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翻訳=酒匂寛

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