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2026.05.23 17:00

創業者がメタに移籍し「終わった」と評されたScale AI、新CEOのもとで売上回復

Scale AIの新CEOのジェイソン・ドローグ(Photo by Tasos Katopodis/Getty Images for Semafor World Economy)

米政府向け事業で約795億円の契約を獲得

Scale AIは、ワンの指揮下で始まった米政府向け事業にも、力を入れている。Scale AIはその後、国防総省がAIエージェントを作戦計画に組み込むために進めるProject Thunderforgeを主導してきた。国防総省は先日、この取り組みに関連してScale AIに5億ドル(約795億円)の契約を与えた。同社は先月、トランプ大統領が進める1850億ドル(約29.42兆円)規模のミサイル防衛シールド構想「Golden Dome」でも、PalantirやAndurilとともに契約企業に選ばれた。ただし、Scale AIと国防総省はいずれも、このプロジェクトにおけるScale AIの具体的な役割については説明を控えた。

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国防総省の最高デジタル・AI責任者キャメロン・スタンリーによると、Scale AIの実績は、機械学習を軍事情報の業務フローに取り入れるProject Mavenでのコンピュータービジョン業務にさかのぼる。スタンリーは同社のメタデータ整理手法を「最高レベル」と評価する。

スタンリーは、Scale AIの強みをほかにも挙げた。国防総省がばらばらに散在するデータセットを活用できるようにする点、そして同省の官僚組織の中でどう動けばプロジェクトを前に進められるかを理解している点だ。「Scale AIは、膨大で多様なデータを取り込み、そのデータの意味を読み解いた上で、実際にアルゴリズムの訓練に使える形に構造化できる。その能力はかなり独自性が高い」とスタンリーはフォーブスに語った。

Scale AIのツールが実戦で使われたかどうかについて、スタンリーは明言を避けた。Scale AIの広報担当者も、国防総省向けの具体的な業務内容については開示を控えた。

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成長が鈍化したデータラベリング市場で強まる、競合の攻勢

Scale AIがデータラベリング事業から重点を移しているのは、メタが一部出資するベンダーを避けたい顧客がいて成長余地に上限が生じたからではない──ドローグはそう強調する。むしろ、「データラベリング事業全体の成長が鈍化しているためだ」と彼は述べている。その上で、大企業がこぞってAI時代への移行を進める中、企業向けアプリケーション開発の市場にはまだ大きな余地があるという。

データラベリング分野でScale AIと競合するSurge、Mercor、Handshake、Invisibleといった企業は、この機を逃さず攻勢を強めている。両者の間では激しい対立も生まれている。たとえば、Mercorは2025年、Scale AIの元社員を採用したが、この社員はScale AIの顧客戦略に関する営業秘密を盗んだと訴えられた。この訴訟は、これまで報じられていなかった法的書類によると、1月に非公開の金額で和解した。

ある競合企業のCEOは、メタとの取引以降、データラベリング契約の獲得競争でScale AIの存在感が薄れているように見えると語った。「ここ数カ月、Scale AIの名前を聞いていない。話題に上がる企業ではなくなっている」とこのCEOは述べている。

メタとの取引時から検討してきた新規株式公開

Scale AIは新規株式公開(IPO)の可能性も視野に入れている。そもそもメタとの取引に踏み切った時点で、IPOは検討材料の1つだった。「ある意味で、この投資から二重に利益を得ることもまだ可能だ」と語るボルピは、残された会社が上場する「2度目のエグジット」の可能性を示唆した。

ドローグは上場の時期については慎重だ。「Scale AIはいずれ上場企業になる可能性が非常に高い」とドローグは語る。ただ、同社は「その計画はまだ、きわめて初期の段階にある」とも付け加えた。

他の「アクハイヤー」と同列に扱われることをドローグは否定

現在、Scale AIは前例のない立ち位置にいる。ここ数年、いくつもの新興企業の創業者がハイテク大手に移籍する、派手なアクハイヤーに近い取引が相次いだ。Inflection、Adept、Character、Windsurfといった注目AI企業の創業者が、マイクロソフト、アマゾン、グーグルに移籍した。

(編注:アクハイヤー[Acqui-hire]は、Acquisition[買収]とHire[雇用]を組み合わせた造語。製品や事業自体ではなく、買収先企業の優秀な人材やチームを獲得することを主目的とした買収手法を指す)

ドローグは、Scale AIがそうした企業と同列に扱われることを強く否定する。

「なぜなら我々は、実際のビジネスを築いていたからだ。あの企業には事業がなかった。そこには大きな違いがあると思う」とドローグは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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