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2026.05.23 17:00

創業者がメタに移籍し「終わった」と評されたScale AI、新CEOのもとで売上回復

Scale AIの新CEOのジェイソン・ドローグ(Photo by Tasos Katopodis/Getty Images for Semafor World Economy)

共同創業者との出会いから別れに至る創業10年

ワンの両親は、原子爆弾を開発で知られるロスアラモス国立研究所の物理学者だった。ワンは約10年前、共同創業者のルーシー・グオとともにScale AIを立ち上げた。グオは、ビリオネアのピーター・ティールが立ち上げた、有望な若者に大学中退を促すプログラム「ティール・フェロー」に選ばれた後にカーネギーメロン大学を中退していた。2人はQ&AプラットフォームのQuoraで働いていたときに出会った。

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グオは2025年、起業家エマ・グリードのポッドキャスト番組『Aspire』に出演した際に、将来の事業計画をめぐる対立で、ワンとの関係が悪化したと語っていた。決定的なきっかけは、グオがある人物に「ワンは解任されるべきだと思う」と話した後に訪れたという。彼女は、その人物が後にワンにこの発言を伝えたのではないかと番組で推測していた。「私は、その発言をワンに伝えたと思われる人物に対して苦い思いを抱いていた。その人物とは一定の信頼関係があると思っていたからだ」とグオはグリードに語り、「少し裏切られたように感じた」と付け加えた。

グオは結局、Scale AIを去った。この経緯について尋ねられたワンは、「我々はこの話をあまりしない」とぎこちない笑みを浮かべて語る。「創業者同士の別れがどれほどよくあることなのかは、Yコンビネーターでも教えてはくれない。ただ、我々はそれを乗り越えたと思っている。会社のチーム全員が大きな成功を収められたことを、私は本当に誇りに思っている」と彼は続けた。

ザッカーバーグからの連絡で決まった、ワンのメタ移籍

その7年後、今度はワンが会社を去る番になった。ザッカーバーグから最初に連絡があったのは2025年春だった。当時、メタの主力モデル「Llama 4」が期待外れの結果に終わり、ザッカーバーグは新たなAI責任者を探していた。2人が最初に出会ったのは、その数年前、ワンが経営についての助言を求めて、彼のもとを訪ねたときのことだったという。

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ザッカーバーグから、どのような言葉でメタに移るよう口説かれたのかを尋ねられても、ワンは特別な説得があったかのようには語らない。「メタにはAI分野で非常に大きな機会があり、それはとても刺激的だ。一緒に取り組む方法を考えようという話だった。それ以上に複雑なものだったかどうかも分からない」とワンは控えめに振り返った。ワンは、ザッカーバーグが本気で取り組んでいることが、「とてもはっきりしていた」とも付け加えた。

ワンはその後、この機会を受け入れるべきかどうかを判断するため、取締役会メンバーに意見を求めた。かつてIndex VenturesのパートナーとしてScale AIに初期投資を行ったマイク・ボルピは、「この種の取引は、メリットとデメリットがほぼ拮抗したときに成立するものだ」と語る。ボルピがワンと交わした議論は、取引そのものにとどまらなかった。「議論の中心は、取引の具体的な仕組みではなかった。アレックスが人生で何を成し遂げたいのかという話だった」とボルピは続けた。

2025年6月に発表された140億ドル(約2.23兆円)のこの取引は、投資家と社員の双方に大きな利益をもたらした。大半の社員は、自身が保有する株式報酬パッケージの約半分に相当する配当を受け取ったと、取引に詳しい関係者は語った。

2025年8月、全従業員の14%にあたる200人を削減

ワンの退社という決断には、一部の社員が動揺したのも無理はなかった。会社を去ることに罪悪感はなかったのかと問われたワンは、「さまざまな感情が生まれたのは確かだと思う。ただ、チームは素晴らしい仕事を成し遂げられると、私は常に確信していた」と語る。

その後、人員削減も行われた。取引発表から2カ月後の2025年8月、Scale AIは全従業員の約14%にあたるフルタイム社員200人を削減すると発表した。同社は500人の契約社員との業務も打ち切った(この契約社員は、Scale AIの法人契約に基づく人員であり、個別契約で働くデータラベラーとは異なる)。Scale AIの広報担当者によると、同社の正社員数は現在約1300人で、年末までに追加で500人を採用する計画だという。

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翻訳=上田裕資

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