日本アニメ、米国で問われるファン・メディア開拓──興行の成功と文化的浸透のギャップ

日本IPとMLB球団のコラボ例。2026年5月撮影。フィラデルフィア・フィリーズ対ボストン・レッドソックス戦の試合前のフォトセッション。『ONE PIECE』のルフィとトニートニー・チョッパーに扮したパフォーマーとともに、ポーズをとるボストン・レッドソックスのセダン・ラファエラ(Photo by Paul Rutherford/MLB Photos via Getty Images)

進化する中国国内アニメ市場

中国国内での関心低下は、政府が新興アニメスタジオを保護する規制を敷いた2006年ごろまでさかのぼれる可能性がある。文化保護主義の名目で約20年にわたり検閲が続いた結果、若い世代は成熟した中国アニメ産業とともに育ち、日本アニメの美学を備えつつ、中国的な語り口と感性を持つ作品に触れられる環境になった。

advertisement

中国最大の検索エンジン向けで、百度指数(Baidu Index。Google トレンドに似たツール)を用い、主要なアニメフランチャイズ3作品(『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『名探偵コナン』)と中国IP(『羅小黒戦記』『诡秘之主(詭秘の主。Lord of Mysteries)』『凡人修仙传(凡人修仙伝。A Record of Mortal's Journey to Immortality)』)を比較すると、日本作品の検索平均ボリュームが2019〜2020年にかけて全体として低下するというパラダイムシフトが見られる。

補足すると、2026年4月の百度指数データでは、前述の日本・中国のフランチャイズはいずれも男性に強く偏り、主要層は30代だが、中国の3作品は40歳以上の比率がより高い。これは、中国が暴力的だと判断したアニメを検閲してきたことや、2021年に子どものゲームのスクリーンタイムを制限した政策の影響かもしれない。

この10年間に生まれた子どもたちは、日本アニメがより厳しく監視され、人気も落ちていた時代に育った──そう考えるのが自然である。

advertisement

JETRO(日本貿易振興機構)は2024年に報告書を公表し、Bilibiliで最も視聴されたアニメとして『名探偵コナン』を挙げた。31シーズン合計で再生数は10億3000万回に達する。しかし、中国最大のアニメプラットフォームで『凡人修仙传』が約20億回の視聴を獲得しているのに比べれば見劣りする。さらに、機転の利くコナンでさえ、『僕のヒーローアカデミア』との一見無害なコラボが引き金となったネット上の取り締まりから逃れられず、最新の標的となった(編注:『僕のヒーローアカデミア』は、過去に登場した悪役の名前が旧日本軍731部隊を連想させるとして、2020年に中国で配信停止となった経緯がある。コラボ公開後、北京・重慶・蘭州のアニメイベントでコナン関連商品の販売やコスプレが禁止される事態に発展した)。

現在の中国は、政治的に不安定なこの時期を好機として、国内外で中国のアニメやゲームのフランチャイズを推進しつつ、日本のアニメ産業に関する中国国内の関心と依存をさらに弱めようとしている。日本が、海外市場におけるアニメ事業を2033年までに1兆円から6兆円へ拡大するという目標を掲げ続けるなら、日本企業は米国でのアニメ普及に向けて、意識的な取り組みを強める必要がある。

次ページ > 過小評価されてきた米国のアニメ市場

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事