中国ネットユーザー、米国の「CEO観光客」に大盛り上がり
米国のCEO代表団に対する中国ソーシャルメディアの反応は、当局が管理するプラットフォームの基準からすると、驚くほど気さくで親しみ深いものだった。中国のインターネット上では、センシティブなコメントは数分でスレッドごと削除される。つまり、検閲官が拡散を認めた投稿は、それ自体がシグナルなのだ。今回のトランプ訪中にあたり、中国当局は実に多くの情報の拡散を許可した。
象徴的な動画として拡散された一つが、人民大会堂の前で、歓迎式典を控えてクックやフアンら他のCEOたちが不動の姿勢で謙虚に待機する間、マスクがスマートフォンを掲げ、周囲のパノラマ動画を撮影するため体をぐるりと1回転させる様子を映したものだ。中国のネットユーザーたちは、嘲笑ではなく好意を持ってこれを受け止めた。
広く拡散されたあるコメントは、マスクを「会社の経費で休暇を取って、WeChat(微信)のモーメンツ用に写真を撮っている人」に例えていた。「モーメンツに投稿しないと、実際には来ていなかったことになっちゃうからな」と冗談を返すコメントも付いた。「兄弟たちよ、これが中国だ――ここのエネルギーはとにかく違う」とのコメントもあった。世界一の富豪で、6880億ドル(約109兆円)もの個人資産を有する人物が、まるで中国の強大な権力の中心地に立っていることに驚嘆する観光客のように振る舞っている、とみたのである。
中国SNSで一躍脚光を浴びたもう一人のスターは、マスクの6歳になる息子、X Æ A-Xii(エックス・アッシュ・エートゥエルブ)だ。マスクは人民大会堂でのワーキングセッションに息子を連れて行ったが、その際のファッションが中国の伝統的な意匠を取り入れたベストに、虎の頭をかたどったショルダーバッグだったことが注目を集めたのだ。マスクはその夜、X(旧ツイッター)に中国語で「息子は中国語を勉強しています」と投稿した。
数時間のうちに、虎の頭のバッグを販売している広西チワン族自治区の企業のネットショップでは商品名が「マスクの息子のバッグ」に変更され、売上はそれまでの2個から30分足らずで200個以上に急増。真夜中までに完売した。
当初は訪中代表団から除外され、世論の批判を受けて土壇場で同行者に加えられたエヌビディアのフアンも、中国のネット上で人気者となった。スーツを着て「(会談は)すばらしかった」と記者団に語る映像とともに、トレードマークの革ジャン姿で北京の下町スポット・胡同を訪れ、屋台の麺を立ち食いし、濃厚クリーミーなヨーグルト「奶皮子酸奶」を買い、ドリンクチェーンの蜜雪冰城(MIXUE/ミーシュー)でバブルティー(タピオカティー)を手に取る様子などを撮影した動画が拡散された。
中国のSNSフィードから読み取れる暗黙のメッセージは、世界最高の時価総額を誇る企業のCEOでさえ、中国市場にあからさまな売り込みをしているというものだった。エヌビディアのAIチップは米国政府が中国への輸出を制限してきた。フアンは中国市場には500億ドル(約7兆9300億円)規模の価値があると公言しており、エヌビディアのAI向けGPU「H200」の中国販売について期待どおり承認を得られるかどうかが、今後90日間にわたり中国テック業界が最も注目する中国の政策のゆくえとなりそうだ。


