企業幹部にも求められる客観性を重視する姿勢
上記の例は現在進行中の国家安全保障上の危機に焦点を当てたものだが、企業幹部も客観性を保つことに圧力を感じていることは注目に値する。
新聞には、企業の経理部門や最高財務責任者(CFO)が、業績不振を隠蔽(いんぺい)するため、外部環境の逆風を強調したり、利益率の低下を覆い隠して全体的な成長のみに焦点を当てたりするなど、収益操作の巧妙な方法を編み出したという記事が定期的に掲載される。同様に、過去数十年にわたり、さまざまな業界で報告を迫られた幹部が業績を著しく誇張した事例を私たちは目の当たりにしてきた。今後、民間部門全体で財務面の圧力が強まるにつれ、こうした事例がさらに増えるものと予想される。
偏見のわなを避けるには
もし客観性が賢明な意思決定に不可欠な要素であり、その欠如が政策の失敗へと確実につながるのであれば、指導者はどのようにして批判を受け入れつつ、揺るぎない客観性を保つことができるのだろうか? ここに複数の提案を示そう。
● 第一に、政府や民間企業の最も賢明な指導者は、最良の決定は通常、深い専門知識を持つ人々を含め、多様な視点を持つ多くの人々からの意見を取り入れて下されるものであり、政策の審議において1つの意見に支配されてはならないことを認識している。例えば、米国のバラク・オバマ元大統領がホワイトハウスの危機管理室で開かれた会議で、後列に座る参加者全員に意見を求めていたことを、筆者は鮮明に覚えている。これは、あらゆる人の独自の視点や異なる見解が奨励され、十分に検討されることを確実にするための最良の方法だと筆者は考えている。
● 第二に、高い客観性を維持するために、賢明な指導者は常に、可能な限り最高水準の情報収集と分析の手法に加え、無意識の偏見を排除するための体系的な意思決定方法を常に重視している。
● 言い換えれば、最大のストレスがかかる局面で、優れた指導者は通常、確立された一貫性のある意思決定規範を「安全な避難所」として頼りにしてきたのだ。
長年にわたり、筆者は独自の情報の入手こそが、効果的な意思決定を導く上で最も重要な要素であると考えてきた。しかし、長年の苦労の末に得た知見を踏まえると、国家安全保障や企業経営の最善の意思決定を実現するためには、客観性こそが最も重要な資質であると考えるようになった。


