すでにこのギャップを埋めた組織もあり、マイクロソフトはそれらを「フロンティア企業」と呼んでいる。個人の能力と、組織の準備態勢が互いに補強し合っている組織は約16%ある。これらの組織の管理職は、AI利用の模範を示し、AIを活用した業務の品質基準を設定している。チームは、学びや失敗を共有し、実験は罰せられることなく、支援されている。
フロンティア企業の従業員は、「業務を刷新することによって、その結果にかかわらず、報われている」と述べる割合が2倍高い。「社内文化、管理職の支援、人材戦略がAIに与える影響」は67%であり、「個人の姿勢や行動がAIに与える影響」(32%)の2倍以上を占めている。
AIが職場で真の価値をもたらすかどうかを左右する最大の要因は、ツールそのものではない。それを使う人々を取り巻く環境にある。
「阻害された主体性」を取り戻す方法 リーダーが主導すべき組織再設計
変革のパラドックスは、システムの問題だ。システムが自己修復することはない。
業務の変化に合わせてシステムを再設計することこそ、今、すべてのリーダーが注力すべき仕事だ。つまり、評価指標やインセンティブ、期待値は、単に従来の成果を維持することではなく、働き方を変革した人々を評価するものでなければならない。
それは、AIを戦略的優位性として捉え、実験を奨励するような社内文化を築くことを意味する。そして、AI活用の手本を示し、その利用を促進する管理職が必要だ。スキルを身につけ、それを実践するための場を提供する人材戦略が必要だ。
従業員が影響力を発揮できる可能性が、かつてないほど高まっていることは、調査結果を見れば明らかだ。しかしほとんどの組織において、人々を取り巻くシステムが、その可能性を十分に引き出せるほど迅速に再構築されているかどうかは明らかとは言えない。
この記事の冒頭で紹介した管理職の話を再び取り上げよう。実務を担当するエージェントたちを統括しているが、依然として、仕事に対する意思決定や指揮、責任といった質ではなく、成果だけで評価され、昇進もそれで決まる。こうした状況は設計上の欠陥だ。役割は進化したが、それを取り巻くシステムは進化していない。
すべてのリーダーは、そのシステムの一端を担っている。すべてのリーダーは、一つのシンプルな問いを自分に投げ掛けるべきだ。最も高い能力を必要とする仕事をしているメンバーが、その能力を最大限に発揮できるようにするには、チームで何を変えなければならないか?
再設計はそこから始まる。


