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2026.05.16 22:36

アクセシビリティを正しく実現する「一度きりの機会」をAIは逃してはならない

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この30年、ウェブはアクセシビリティの観点から警鐘を鳴らす物語であり続けた。障害のあるユーザーを想定せずに何十億ものページが作られ、業界は、本来最初から備わっているべきだったものを後から改修するために長年を費やしてきた。2024 WebAIM Million reportによれば、アクセス数上位100万のホームページの95.9%に検知可能なアクセシビリティ上の不具合が見つかっており、この数字は年を追ってもほとんど動いていない。一方、世界保健機関(WHO)は、世界で13億人が重大な障害を抱えて暮らしていると推計している。

いま私たちはソフトウェア開発の新時代の入り口に立っている。AIモデルが世界のコードの相当部分を書く時代である。問題は、私たちが、到底許されない規模で同じ過ちを繰り返すのかどうかだ。

私は、AIとアクセシビリティの交差点で働く2人のリーダーに、この瞬間が何を要求しているのかを聞いた。Global Accessibility Awareness Day(GAAD)Foundationの共同創設者で会長を務めるジョー・デボン、そしてVersant Mediaのアクセシビリティ担当シニアディレクターであるローリ・サミュエルズだ。彼らの答えは、AIツールを作る人、買う人、規制する人の誰にとっても必読である。

賭け金は複利で膨らんだ

1人の開発者がアクセシビリティを欠いたコードを書く場合、その影響は1つの製品に限定される。AIモデルがアクセシビリティを欠いたコードを書く場合、そのモデルが使われるあらゆる場所に影響が及ぶ。

「AIモデルがアクセシビリティを欠いたコードを書くと、そのモデルで作られるすべての製品に影響する」とデボンは私に語った。「低コントラストのテキストを生成するモデルは、読みにくいページを1つ作るのではない。何百万というページを作るのだ」

これこそが、AI生成ソフトウェアの中核にある「複利問題」である。基盤モデル(foundation model)に組み込まれたあらゆるデフォルトは、企業向けプラットフォームから近所のレストランの予約フローに至るまで、次世代のデジタル製品のデフォルトになる。

サミュエルズは、てこ(レバレッジ)の観点から緊急性を示した。「私たちはテクノロジーの重要な変曲点にいて、これはアクセシビリティを重視するすべての人にとって、喫緊の課題であると同時に機会でもある。いまソフトウェアアプリケーションの生成に使われているAIモデルは比較的少数だ。これらのモデルが、生成するあらゆるものに一貫したアクセシビリティの最低限のデフォルトを提供するようにすることが極めて重要である」

いまは漏斗が狭く、基盤モデル企業の一握りが、何十億人ものオンライン体験を形づくる標準を決めている。この窓は永遠に開いたままではない。

アクセシビリティ専門職の役割はすでに変わった

ソフトウェアエンジニアリングは、わずか2年前と比べても別物になった。大半のエンジニアリング部門はいま、AIコーディングアシスタントを用いて開発しており、それを上手く使いこなすための専門性は、それ自体が1つの分野になっている。

「開発が変わったからこそ、アクセシビリティ専門職の役割も2026年に変わった」とデボンは説明する。「アクセシビリティの専門家が、一般的な開発者よりもセマンティックHTML(semantic HTML)に詳しくなっていったのと同じように、明日のアクセシビリティ専門家はAIコーディングツールをどう操るかを知る必要がある。だがそれができ、高品質なオープンソースプロジェクトが利用可能になれば、エンタープライズの状況は改善する可能性が高い。アクセシビリティ部門のガードレールは、AIが従うガイドラインに組み込まれていくだろう」

つまり、エンタープライズには前進する道筋がある。より難しい問題は、それ以外のすべてである。

「課題は何百万もの民間企業だ」とデボンは言う。「彼らはAIを使って自分でウェブサイトをコーディングするか、AIを使う請負業者を雇うだろう。アクセシビリティのことなど、まず何も知らないはずだ。だから、明日のアクセシビリティは、これらのモデルがデフォルトでどれほどアクセシブルなコードを生成するかにかかっている。すべてはAnthropicやOpenAIのような基盤モデル企業次第だ」

測れないものは改善できない

基盤モデル企業はベンチマークで競争する。何を最適化するかは、そこで決まる。つい最近まで、アクセシビリティはそのリストに入っていなかった。

それが、GAAD FoundationがServiceNowと提携し、AIモデルがアクセシブルなコードをどれほど生成できるかを評価するAI Model Accessibility Checker「AIMAC」を構築した理由である。

「測らないものは改善できない」とデボンは語る。「私たちは彼らに、AIMACで高得点を取るためのガイドを文字通り提供した。すでに効果が出ている。GoogleのGemini 3 Pro Previewは、かつて私たちのベンチマークで最下位だった。後継のGemini 3.1 Pro Previewは9位に跳ね上がった。まさに、ベンチマークが促してほしいと期待していた種類の進歩だ」

同様の取り組みとして、Microsoftのエンジニアが開発したA11y LLM Evalも、近い結果を示している。傾向は明白だ。アクセシビリティが公に測定されれば、モデルは改善する。

現時点の状況は、率直に言って入り混じっている。「うまくやれているモデルもある。OpenAIには、ベンチマークでほぼ満点に近いスコアを達成したモデルが3つある。Arcee AIという従業員30人のスタートアップは、無料で使えるオープンソースモデルを作り、ランキング5位に入った」とデボンは指摘する。「こうした結果は、1年前でさえ想像しにくかった」

だが、最も一般的な失敗パターンは変わっていない。低コントラストのテキストはAI生成ページの84.8%に現れ、人間が作った上位100万サイトでの84%という比率とほぼ同じである。空のリンク、フォームのラベル欠落、空のボタンが主要な問題として続く。機械は私たちの最悪の癖を再生産している。

そして、注意深く見ている人なら誰でも警戒すべき、特定のリスクがある。退行(regression)だ。

「新バージョンをリリースした際に、アクセシビリティが悪化するモデルを私たちは見てきた」とデボンは言う。「あるモデルが高得点を取った後、企業が他のベンチマークに最適化したアップデートを出すと、アクセシビリティが落ちる。つまりアクセシビリティが評価パイプラインに含まれていなかったということだ。残念ながら、コーディング分野のリーダーであり、自らを最も道徳的かつ倫理的な基盤モデル企業だと掲げるAnthropicは、一貫して中位のスコアにとどまっている。そして新モデルのリリースでは、良くなることもあれば悪くなることもある」

コンプライアンスの壁が迫っている

アクセシビリティをなお「任意」と扱う組織にとって、規制環境は急速に包囲を狭めている。

「欧州では、EU域内で商品やサービスを販売するすべての企業にデジタルアクセシビリティを求めるようになっている」とサミュエルズは語る。「米国では、すべての連邦政府機関がデジタルアクセシビリティ法の対象であり、1年足らずで州政府機関もすべて対象になる。AIを使ってデジタル製品を構築する利点とスピードを得たいなら、組織はAI提供企業にアクセシブルなコードを生成するよう圧力をかける必要がある。同じ圧力はデジタルプライバシーとセキュリティについてもかけるべきだ」

要点は構造にある。上流のツールがデフォルトでアクセシビリティを欠くコードを生成している状況で、下流の個々の組織がそれぞれ解決する形に委ねることはできない。「AIがアプリケーション開発にもたらす変化の速度と規模を考えれば、これは個々の企業や組織が単独で解決できる問題ではない」とサミュエルズは言う。

「間違い」とは実際どのようなものか

アクセシビリティ違反を抽象的に語るのは簡単である。だが、その失敗パターンが、ソフトウェアを使おうとする実在の人にとって何を意味するのかを見るのは別の話だ。

「主要なAIモデルにタブインターフェースを作らせてみてほしい」とデボンは言う。「視覚的には正しく見えるものが返ってくるだろう。上部にタブが並び、下にコンテンツパネルがある。だが、キーボードとスクリーンリーダーでテストすると破綻する。目が見えるマウス利用者は決して気づかない。視覚障害のあるユーザーは文字通り使えない」

ここで、自動化ツールの限界が見えてくる。デボンは自らの開発ワークフローを、複数のセーフガードの積み重ねとして説明した。テイラー・アーントとジェフ・ビショップが作ったオープンソースのAccessibility Agents、コンポーネント単位の基準のためのMagentaA11yのMCPサーバー、カスタムチェック、そして最後にアクセシビリティ専門家による手動レビューである。「AIだけでは100%にはならない。より速く、より先まで進めてはくれるが、人間の専門性が必要だ」

サミュエルズはさらに踏み込む。「アクセシビリティとは、認知、感覚、身体の障害が幅広く存在する人々にとって、使える体験を生み出すことに他ならない。AIは、確立されたアクセシブルなコーディングパターンや、色のコントラストなどの視覚要件を、はるかにうまく活用できなければならないし、そうすべきだ。しかし同様に重要なのは、アクセシビリティ上のニーズがある人々と検証し、デジタル体験が本当に使えるものになっているかを確かめることである。いまAIは、完全に使い物にならないコードを生成しており、それは容認できない」

組織がいま適用できる実務的なセーフガードもある。「GitHubはCopilotで、コードのアクセシビリティエラーをチェックし、自動的に修正案を提案できるカスタム指示とカスタムエージェントを有効にしている」とサミュエルズは述べる。「AIモデルは、基本的なプロンプトでアクセシブルなコードを生成するよう促すだけで、はるかに良い結果を出す傾向がある。だから、デフォルトで正しくできるようになるまでは、アクセシブルなユーザーインターフェースを作るようAIモデルにプロンプトを与えることが重要だ」

初日から「障害のある開発者」を同じ部屋に

どんな製品でも、欠陥のある前提を最も速く露呈させる方法は、その影響を最も受ける人々を意思決定の役割に就かせることだ。AIツールも例外ではない。

「障害のある開発者が同じ部屋にいると、前提は即座に露呈する」とデボンは言う。「誰かがドラッグ&ドロップのインターフェースを提案し、スイッチを使う開発者が『それは文字通りできない』と言う。誰かが『ボタンをクリックすればいい』と言い、音声で操作する開発者が『どのボタンだ? あなたのツールはラベルを付けていない』と言う」

デボンが言及したAccessibility Agentsプロジェクトは、どちらも視覚障害のあるテイラー・アーントとジェフ・ビショップによって作られた。彼らは、自分たちを排除するコードを生成し続けるAIコーディングツールと戦うことに疲れ、それを理由に開発した。アーントはこう書いている。「AIがフォーカストラップのないモーダルを生成すると、動けなくなるのは私である」

「彼らはWCAGのチェックリストから作るのではなく、オープンソース開発者がよく言うように、自分の課題を自分で解決する」とデボンは語る。「障害のある開発者が初日から同じ部屋にいると変わるのはそこだ。作る人が必要とする人でもあるから、ツールは良くなる。AI業界は、障害のある開発者を積極的に採用し、公正に報酬を払い、意思決定権を与える必要がある」

サミュエルズは、確かな前進と確かな不足の双方を見ている。「テック領域には、障害のあるクリエイターがもっと必要だ。彼らは、当事者としての経験に根差した、他に代えがたい視点、イノベーション、問題解決力をもたらす。AIは障害コミュニティにとっていくつかのプラスを生んできた。例えば、視覚障害のある人のために画像や印刷物を説明できるMicrosoftのSeeing AIや、Be My Eyesのツール、神経多様性(ニューロダイバージェント)のある人のコミュニケーションやタスク管理を助けるAI搭載アシスタントなどだ。幸いにも、GitHub、Apple、Microsoft、Googleといった大手テック企業が、開発者ツールをよりアクセシブルにするために必要な取り組みを進めている」

支援技術の新たなカテゴリー

AIが壊れたインターフェースを生成するというもっともな懸念がある一方で、別の物語も進行している。AIは、これまで完全に門前払いだった人々に対して、ソフトウェア開発を開放しつつある。

「私は、OpenClawやAIコーディングアシスタントのようなツールを使い、以前ではあり得なかった速さでソフトウェアを作っている障害のある友人がいる」とデボンは言う。「ツールそのもののアクセシビリティには、まだ本当の問題がある。だが、音声で、支援技術で、自然言語でモデルとやり取りする道が増えるほど、開発は文字通り、誰にとってもよりアクセシブルになる」

下流の効果は、彼が「過小評価されている」と呼ぶものだ。「より多様な人がソフトウェアを作れるようになれば、ソフトウェアはより多様なニーズを反映する。視覚障害のある開発者は、スクリーンリーダーで動くツールを作る。彼らにとってそれは自明だからだ。運動障害のある開発者は、微細な運動制御を要しないインターフェースを作る。それが当事者としての経験だからだ」

サミュエルズは、AIそのものを支援技術の新たなカテゴリーとして説明した。「アクセシビリティの領域では、ウェブやモバイルアプリが、スクリーンリーダーソフトウェア、拡大(表示)ツール、キーボード、音声アシスタント、スイッチデバイスといった支援技術で動作することを重視している。興味深いのは、AIが新たな種類の『支援技術』として使われ始めている点であり、障害のある人々にとって、より良いユーザー体験、生産性、創造力の可能性を開く」

2031年に「デフォルトでアクセシブル」が意味すべきこと

私はデボンに、5年後に成功とは具体的にどのような姿かと尋ねた。彼の答えは、問いそのものを組み替えるものだった。

「それは2つのことを意味するはずだ。第一に、AIが従来型のインターフェースを生成する場合、誰かが頼まなくてもアクセシブルであるべきだ。キーボード操作が可能で、スクリーンリーダーと互換性があり、十分な色のコントラストがあり、適切な構造を備えている。モデルはデフォルトでアクセシブルにするべきだ」

「だが、さらに重要なのは、特定のインターフェースからアクセスを切り離すことだ。いま、レストランがメニューをアクセシブルでないPDFで置けば、視覚障害のある人は、そこに何が書いてあるのかを把握するために出来の悪いツールを使うしかなくなる。航空会社の予約フローがアクセシブルでなければ、運動障害のある人は電話窓口にかけて待たなければならない。AIの本当の約束は、サービスやデータがエージェントから利用可能になることにある。障害のある人は、自分にとって最適なツールを使って、食事を注文し、航空券を予約し、銀行残高を確認できるようになる。自分を想定せずに作られた1つのインターフェースに無理やり通される必要はなくなる」

そのビジョンには業界全体の説明責任が必要だ。「AIMACのようなベンチマークを業界全体で採用し、基盤モデル企業がアクセシビリティで競争するようにしなければならない。AI企業で影響力のある立場に障害のある人々がいる必要がある。そして、コンクリートがまだ湿っているうちに、これが重要だと決めなければならない。いま設定されているパターンは固着する。5年後、私たちは今回うまくやれたと言うか、あるいは、何十年もウェブについて書いてきたのと同じ改修記事をまた書くことになる」

ウェブの時代は、アクセシビリティが後付けにされたときに何が起きるかを教えた。何十億ものページ、何十年にもわたる法的措置、そして、完全な参加から締め出された一世代のユーザー。AIの時代は、最後に改修するのではなく、ゼロから設計するという、まれな「2度目のチャンス」を与えている。それを生かせるかどうかは、いままさに、比較的少数の企業が行っている選択にかかっている。しかも、デフォルトがインフラとして固まってしまうまでの猶予は、比較的短い。

コンクリートはまだ湿っている。だが、それも長くは続かない。

forbes.com 原文

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