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2026.05.19 12:00

AIデータセンター建設ブーム、電力・需要・立地の3重リスクに直面

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数字は驚くべきものだ。米国の5大クラウド事業者は、2026年だけでデータセンター建設に6500億〜7000億ドル(約102.7~110.6兆円。1ドル=158円換算)を投じることを約束している。これは2025年の水準のほぼ2倍に当たる。テレビ番組『シャーク・タンク』の投資家ケビン・オリアリーは、ユタ州にマンハッタンの2倍を超える面積のデータセンター複合施設を建設する計画を立てている。その消費電力は、現在のユタ州とネバダ州を合わせた電力消費量に匹敵するという。

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それでも、AI業界の内部からさえ、業界は完全には実現しないかもしれない未来を前提に建設を進めているのではないかという疑問が出始めている。分散型AIインフラ構想に関する最近のインタビューで、テザー(Tether)のCEOを務めるパオロ・アルドイノは、「私たちが現在前提としている計算のあり方が今後も続くかどうかは、まったく明らかではありません。その場合、これほど多くのデータセンターは必要ないかもしれません」と述べた(編注:テザーは、ドル連動型ステーブルコイン「USDT」の発行体。同社はノートPCやスマートフォン上での動作をうたう分散型AIインフラ「QVAC」および「QVAC Fabric LLM」を手がけている)。

業界は、成長が続くだけでなく、今後何年にもわたり指数関数的な増加が続くことを前提にした規模で資本を投じている。規模の大きさだけが戦略の正しさを証明するのであれば、これは米国史上で最も合理的な建設計画ということになる。だが、実際にはそうではない。

2033年に175ギガワット不足、延期されるAIデータセンター建設

大々的に発表された投資計画にもかかわらず、ブルームバーグなどの報道によると、2026年に向けて発表された米国のデータセンターの多くは、すでに延期または中止されている。理由は需要が揺らいでいるからではない。データセンターを実際に稼働させるために必要な物理的条件が、計画地の多くで単に整っていないためだ。

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一方で、大量の電力を使うデータセンターを米国の送電網に接続するまでの待ち時間は、数カ月ではなく数年単位になっている。さらに悪いことに、米国の送電網は、旧産業時代に合わせて設計された老朽化した3つの相互接続網の寄せ集めであり、このような需要に対応できる状態にはない。フランスのエネルギー技術企業シュナイダーエレクトリックによると、米国のピーク時の電力供給は2028年までに不足に陥る見通しで、その不足幅は2033年には推定175ギガワットに達するという。

電力制約を回避するため、イーロン・マスクは宇宙空間に軌道上AIデータセンターを開発する計画を発表している。ただし、それが実際に建設されるかどうかは、需要が今後どう伸びるかに左右される。当面、マスクは地上で大規模なAIインフラを建設しており、ミシシッピ州とコロラド州には巨大な新データセンターを整備している。

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翻訳=酒匂寛

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