経営・戦略

2026.05.16 02:23

AI戦略を持たない企業はない。しかし、その効果を証明できる企業もほとんどない

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いま、あらゆる経営幹部やVPが最も聞かれたくない問いは「AI投資から、私たちは実際に何を得ているのか?」だろう。多くのリーダーがチームのために新しいツールやサブスクリプションに多額を投じ、部門横断でパイロットを立ち上げ、全社的なAI活用の号令まで発する一方で、価値とROI(投資対効果)を測定することが実務では難しいと、ほどなくして思い知る。

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新興テクノロジーの導入は本質的に混沌を伴う。実験段階は制御が難しく、既存システムやデータがそもそも適切に整備されていなかったため、足場の不安定な基盤からはスケールできないという現実に直面する企業も少なくない。

それでもAIが進化を続けるなかで、導入状況と価値を測るための適切な基盤は、いくつかの初期ステップを踏むことで整備可能だ。そうすれば、組織は予測可能に測定された成果へと向かう正しい軌道に乗れる。

AIの測定が失敗しがちな理由

まず、AIのインパクトを測ろうとする試みの多くがなぜ失敗するのかから始めよう。多くの場合、現在のAI活用は完全に分断されており、異なるチームや個々の担当者が、ほとんど指針のないまま技術をそれぞれ異なる度合いで使っている。変化の速いものを標準化するのは確かに難しい。しかし、早い段階でベストプラクティスについていくつか決め、それを定期的に調整していく判断ができれば、チームに適切な期待値を設定するうえで大きな差が生まれる。

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この延長線上として、多くのチームには「良い使い方」が実際にどのような状態かという成功基準が明確に定義されていない。そのため、P&L(損益計算書)のコスト削減や売上成長の活動に結びつく明示的なKPIも存在しない。望ましい結果に関する基準と具体性がなければ、説明責任は成立せず、測定の問題はいっそう見えにくくなる。

知識ギャップを埋めることから始める

朗報は、実験を奨励する文化をつくれている企業は、すでに他の業界の後発組より一歩先にいるということだ。次のステップは、チーム内の知識ギャップを埋め、どこでどのように価値が生み出されているのかを定義できる状態にすることである。

いま、多くの非技術系チームは、自らの業務をスケールさせられる「システムレベルの思考者」になることを求められている。チームの一部には、小さな自動化を組むといった疑似的な技術作業に抵抗のない生来の「いじり手」もいるが、それ以外の人々には、これまで手当てされてこなかった知識ギャップが程度の差こそあれ存在する。幸い、ここでの学習曲線は乗り越えられないものではなく、必要なのは少しの背景理解と意識づけだ。

現実のビジネスでテクノロジーがどう活用されているかを、該当チームに関連する職能領域で目にしながら学ぶだけで、いま過度に曖昧になっている点に即座に明確さが生まれる。専門家主導のAIセミナーのような無料リソースへの参加を促すことは、重要なスキルギャップを埋めつつ、すでにこれらのツールを成功裏に実装している人々から指針を得る方法の1つだ。

そのうえで、どこでどのように価値が生まれているかを理解するには、組織内のさまざまな取り組みを追跡し、それらをP&Lの勘定科目に接続する具体的な事業成果へと結びつける責任者が必要となる。

「良い測定」とは何か

例えば、カスタマーサクセスチームは、解約リスクの高い顧客に関するデータをどのように提示して最適化するかを担っている。同チームは、すべての顧客接点がSalesforceに保存されるよう自動化を構築し、日次のcronジョブによって、少なくとも2カ月間連絡が取れておらず、30〜60日以内に更新期限が迫っている顧客を抽出する。

この条件に合致した顧客には、Claudeで精緻に作り込んだプロンプトによりカスタムメールの下書きを作成し、MakeやZapierのような信頼できるオーケストレーションツールでスケジュールする。そして各担当者は毎朝、下書きフォルダを確認し、新しい下書きが生成されていないかを見たうえで、手動で検証して送信するようトレーニングを受ける。

そこから、チームはP&Lに結びつく複数の指標を導き出す。第1に、自動化システムが週あたりにフラグを立てた顧客数を、従来、データ抽出とメール文面作成に必要だった手作業と比較し、クライアントマネジャーの時間コストを掛け合わせる。第2に、返信して更新に至った顧客数であり、これは改善された継続率指標、あるいは直接的な売上拡大に直結する。

AIスコアカードを構築する

このように粒度の高い定義に基づけば、各チームの取り組みをAIスコアカードにひもづけ、時間に関連するコスト削減、削減されたその他の直接費用、そして影響を与えた売上を明確に可視化できる。これに上長によるオーナーシップ、達成可能な指標の明確化、定期的なレビューサイクルを組み合わせれば、チームは投資のインパクトをはっきりと把握できるようになる。

時間の経過とともに、チームは最もROIの高いユースケースを抽出できるようになり、最大のインパクトを持つ少数の取り組みに集中し、それ以外の気を散らす要素をそぎ落とせる。そしてそれが起きれば、エンジニアリングリソースを「機能しているもの」を適切にスケールさせるために自信を持って投入できるようになり、経営層にとっても、システムやチームで何が起きているのかについて信頼できる唯一の情報源を得ることで意思決定プロセスが簡素化される。

ほとんどすべての初期実験は、当初は居心地の悪いほど無秩序に感じられるものだ。だが、企業活動の現在の進化を乗り越えるために託した人材へ投資し、各チームに求められることについて明確な期待値を設定すれば、組織はこうした大きな変化がもたらす摩擦を自然に解消していく。やがて、何を測定すべきか、そして何が実際にスケールに足るほど機能しているのかが明確になる。

forbes.com 原文

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