経営・戦略

2026.05.16 01:13

なぜ企業はAIパイロットから成果を得られないのか──深刻化するROI危機

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AIへの投資意欲は拡大し続けているが、価値は依然としてつかみにくい。実際、ガートナーによれば、AI投資のうち変革的な価値をもたらすのは50件に1件にすぎず、投資収益率(ROI)として測定可能なリターンを生み出すのも5件に1件にとどまる。

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数十億ドル規模の投資にもかかわらず、多くの企業がAIから価値を引き出すことに苦戦している。世界最大のAIスタートアップであるOpenAIでさえ、2025年3月に動画生成アプリ「Sora」を終了せざるを得なかった。報道によれば、同アプリは1日あたり100万ドルを消費していたという。

導入を具体的な事業価値に結びつけられないリーダーは、今後より厳しい監視にさらされるだろう。その結果、明確なROIを示したい企業は、AI導入をはるかに的を絞り、意図を持って進める必要がある。

AIのROIを測定する

調査に次ぐ調査が、ビジネスリーダーがAI導入と価値の連関を築けていないことを示している。2026年1月に公表されたPwCの調査では、95カ国の最高経営責任者(CEO)4454人を対象にアンケートを実施し、過去12カ月でAIによる売上増を報告したのは30%にすぎなかった。同時に、56%のCEOはAIがコスト削減にも売上増にも「ゼロ」の改善しかもたらさなかったと答えている。

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AIの取り組みと投資は、成果を求める監視が強まる中で、多くが期待に届いていない。Sapphire Venturesのパートナーであるアンダース・ラナムは、エンタープライズAIスタック全体に投資し、LangChain、WorkOS、Alation、Tractianなどを含むポートフォリオを維持している。ラナムは、ソフトウェア購入側がROIに疑問を抱き始めていると指摘する。

「コストの予測可能性自体が差別化要因になっています。予算は依然として流れていますが、企業は今や、単なる機能の見出しではなく、コミットする前に運用上の予測を求めるようになっています。『これをスケールさせたらいくらかかるのか?』という問いに答えられるAIベンダーが、答えられないベンダーより案件を獲得しています」とラナムは語る。

また、多くの企業がAIデモと測定可能な事業インパクトの間にギャップを抱えているとも述べる。「多くの企業はいまだにパイロット段階にあります。本当のROIを得ている企業は、モデル品質から、AIが既存ワークフローに自然に組み込めるか、そして実際に何が変わったのかを測定できるかへと焦点を移しています」

SnowflakeはROIをどう測るのか

AI導入の影響を測定できることは、パイロットの価値を評価するうえで不可欠だ。SnowflakeでGTMイネーブルメントを率いるプリンシパル・イネーブルメント兼イノベーション・ストラテジストのネイサン・アービーは、AIパイロットや取り組みから実践的なROIを引き出すことに幅広く取り組んできた。

彼は、コミュニケーション・コーチングのロールプレイプラットフォームであるYoodli上で、3000人の営業担当者にAIロールプレイを展開するのを支援したと報じられている。アービーはこのプロジェクトの成果を追跡し、四半期あたり1200時間超のマネジャー工数を削減し、年間で約70万ドルの削減につながったと主張する。

「94%の営業担当者が参加し、採点をAIに移行することで採点管理に要していた1600時間を削減しました。その結果、マネジャーは実際のコーチングに集中でき、時間と支出で推定4〜5倍のROIを実現しました。これらのロールプレイはYoodliのAIプラットフォーム上で実施し、3000人の担当者に対する自動採点を大規模に処理しました」とアービーはメールで語った。

アービーによれば、SnowflakeはCAE(カスタマーアカウントエグゼクティブ)がCFOや調達チームとの対話により備えられるよう、4部構成のAIロールプレイシリーズを構築したという。ディスカバリーや交渉といった主要スキルの向上が見られる一方、長期的には案件の成長とクロージングまでの時間にも焦点を当てている。

では、Snowflakeはより広くAI施策のROIにどう向き合っているのか。アービーは、課題定義と仮説を、時間短縮、スキル向上、立ち上げまでの時間といった目標に結びつけることから始めると説明する。そのうえで短期・長期の両面からレビューする。

短期では、従業員が実際に使っており、改善しているかを評価する。これは完了率、合格率、試行回数、CSATなどを考慮に入れる。長期では、スキル向上、クロージングまでの時間、マネジャー工数の削減といった指標を検討する。

「最も明確なシグナルは、ほぼ常に『人に戻った時間』です。削減できた時間を支出にひも付ければ、防御可能な比率になります。私はパイロットグループで検証し、何が壊れるかを見て、修正点を洗い出してから、立ち上げに向けてスケールさせます。完了より成果に強く寄せています。重要なのは、以前よりうまく何かができるようにすること、そして/または時間を節約することです」とアービーは言う。

また彼は、取り組みをより速く提供するための自動化アシスタントとしてSnowflake Cortex Codeを使い始めたことも共有した。具体的には、以前はAIロールプレイの構築に3〜4週間かかっていたが、現在ではイネーブルメントチームとGTMチームの誰もが活用できるロールプレイを、数時間で構築できるようになったという。

AIを大規模に運用する

見せかけのAI導入は淘汰されつつあるが、中核業務プロセスの効率化に注力してきた企業は、大きなROIを報告している。例えばJPモルガンは、不正防止、パーソナライゼーション、取引、業務効率、与信判断を通じて、AIで銀行のコストを約15億ドル削減したと主張している。

同様に、KlarnaがOpenAIを基盤とするAIアシスタントを立ち上げた後、同社はこのアシスタントがKlarnaのカスタマーサービスチャットの3分の2を自動化し、2024年に約4000万ドルの利益をもたらす見込みだと述べた。

2025年、ビジネスコミュニケーションおよびコンタクトセンター提供企業のRingCentralは、25億ドルの収益を計上し、年間経常収益(ARR)1億ドルを達成した「AI Receptionist」を含む、新たなAI主導の製品群を発表した。

RingCentralの社長兼COOであるキラ・マカゴンは、同社はドル建てでROIを報告していないとしながらも、より多くの着信を処理できるようになったことで、下流の多くの組織が事業を倍増させたと主張している。

マカゴンにとって、実験はイノベーションの重要な推進力だった。「すべてを管理する単一のポイントがあればどれだけいいかと思いますが、それは不可能です。人は実験します。そして実験させなければなりません」と彼女はビデオ通話で語った。

マカゴンは、ユーザーが実験できる一方で、承認されたツールの外へデータを持ち出すことはできないと述べた。ツールが未承認でユーザーが実験したい場合は、合成データを用いたサンドボックスで実施できる。これにより、パイロット開発時の潜在的リスクを抑えられる。

考慮すべきその他の指標

近年、完全に失敗したパイロットをいくつも見てきた。最も注目度の高い例の1つは2024年に起きたもので、マクドナルドが、注文が誤って解釈される様子を撮影した動画が拡散したことを受け、米国のドライブスルー店舗からAIによる注文技術を撤去することを決めた。AIを展開すること自体が目的ではなく、コスト効率がよく信頼できる形で実行することが重要だ。

狭いプロセスに適用すれば、AIは大きなROIをもたらす可能性がある。しかし、価値創出は、そのプロセスが自動化に適しているかどうかに依存する。マクドナルドのパイロットが失敗したのは、背景音の多い屋外環境で音声認識技術が性能を発揮できない可能性を十分に考慮していなかったためだ。

自動化に適したワークフローにAIを適用する場合、ワークフローの完了に要する時間、従業員1人あたりの処理タスク数、エラー削減、精度、従業員満足度などは、パフォーマンスを示す指標として用いることができる。人員数も別の要因になりうる。例えば、AIを活用する小規模チームが、AIなしの大規模チームと同等の生産性を達成できるなら、その点も考慮すべきである。

forbes.com 原文

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