サイエンス

2026.05.19 18:00

血液型2000万年の謎、人類がABO式血液型を維持してきた科学的理由

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2.血液型の中立進化説

第二の理論は、より保守的だ。すなわち、血液型の多様性は、主に中立的なプロセス(集団内のアレルの頻度が、偶然によって変化する「遺伝的浮動」など)を通じて維持されており、そこには弱い選択圧しか作用していない、というものだ。

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この仮説では、ABO式血液型の多型は、際立って有利でもないし、不利でもないとされる。そして、これらの血液型が集団内で維持されてきたのは、単にそれらが、生存や繁殖を著しく阻害しないからに過ぎないと考える。

時として、特定の疾患に関連するとみられる選択圧が、それらの出現頻度をいくらか上下させる可能性はある。しかし、この枠組みの下では、そのような選択圧に、多様性を消滅させるほどの力はない。

一方、2004年の研究の著者らは、中立的プロセスが何らかの役割を果たした可能性はあるものの、それだけでは、ABO式血液型の多様性が驚くべき安定性を有し、世界的に分布している理由を完全に説明できないと示唆している。集団を超え、さらには種をも超えて観察されるパターンは、遺伝的浮動よりも構造化された、何らかの力が作用していることをうかがわせる。

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血液型の多様性がもたらす、進化上の利点

二つの理論はいずれも、進化生物学においてしばしば見られる、より広範な原則を指し示している。それは、自然選択がしばしば、多様性そのものを優先する、という原則だ。

集団内に複数の血液型が存在することは、不確実性に対する生物学的な安全装置を我々に与えた。病原体が急速に進化し、また環境が予測不能に変化する時、均一性は弱点となり得る。すなわち、もし我々全員が全く同じ生物学的特徴を持っていたら、うまく適応した病原体がたった一つあるだけで、人類に壊滅的な結果がもたらされる可能性がある。

しかし多様性があれば、これらの病原体に対する罹患リスクにばらつきが生じる。特定の疾患に対して脆弱な個体が依然として存在する一方で、抵抗性を持つ個体もいる。これにより、感染が広範囲に及んだとしても、少なくとも集団の一部は生き残ることが保証される。そして、さらに重要なことに、その遺伝子を次世代へ引き継がせることができる。

これは、進化生物学者が「平衡選択(Balancing Selection)」と呼ぶものに通じる。平衡選択とは、集団内に複数の遺伝子バリアントが維持されるプロセスだ(なぜならそれぞれが、異なる条件下でそれぞれの利点を持つからだ)。 

この意味において血液型とは、広く個体間に分散された、我々の生存戦略のポートフォリオだ。進化とは、「可能なかぎり最良」な形質を生み出すためのプロセスではない。時として、可能性の幅を保つことの方が理にかなっている場合もある。未来は不確実であるため、柔軟性を持つこと自体が、適応の一つの形態となるのだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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