これには単なる研修プログラム以上の取り組みが必要だ。個々の強みに合った職務の割り当てや有意義なフィードバック、学習文化の醸成、そしてリーダーが門番ではなくコーチとして振る舞うことなどだ。マネジメントの質は従業員の成果とエンゲージメントを左右する最も強い要因の1つであることが研究で一貫して示されている。つまり、ポテンシャルとは単なる個人の属性ではなく関係性や状況に左右される現象なのだ。
AI時代においてポテンシャルが重要な理由
未来の予測が難しいのは今に始まったことではないが、難度は上がっている。AIの進展によって仕事のあり方が一変しつつあり、かつては人間にしかできないと考えられていたタスクが自動化され、特定の専門知識が不要になりつつある。
このような状況では経験や専門知識、資格といった従来の指標の信頼性は低下する。重要なのは「何を知っているか」ではなく、「どれだけ速く学び、適応し、新しい状況で判断できるか」だ。私が別の媒体でも主張しているように、AIは知識をコモディティ化する一方で、好奇心や批判的思考、感情知性といった人間的な資質の価値を高めている。
この変化により、ポテンシャルは人材に関する判断の中心に位置づけられている。組織はまだ完全に形作られていない環境でも活躍できる人材を見極める必要がある。そのためには、これまでの経験よりもその根底にある資質や能力をより重視する必要がある。
ポテンシャル評価でよくある過ち
ポテンシャルへの注目が高まる一方で、多くの組織では依然として予測可能なミスが繰り返されている。
まず、経験や専門知識への過度な依存が挙げられる。これらの要素は測定しやすいが、新しい役割、特に上級管理職における成功を予測する指標としては不十分なことが多い。
2つ目は組織内の政治や主観の影響だ。ポテンシャルに関する判断は、客観的な証拠より個人の偏見や非公式な人脈、組織内の力学によって左右されることが多い。
3つ目は慣れ親しんだものを好む傾向だ。組織は既存のリーダーに似た候補者を好む傾向があり、これにより均質性が強まり、思考の多様性が制限されてしまう。この「クローン効果」はイノベーションや適応力を損なう。
最後に、多くの組織は多様なポテンシャルが花開くような環境を整えられていない。組織の文化が既存の規範からの逸脱を阻むものであるなら、型にはまらない人材を見出しても意味がない。
すでに潜在しているものを見抜く
ポテンシャルへの賭けは避けられないものだ。人の才能を見極めるという判断は、本質的に未来への賭けだ。問題は賭けるかどうかではなく、どうすればもっと良い賭けができるかということだ。
そのための最も信頼できる手段は心理学だ。評価を証拠に基づかせ、安定的で関連性の高い特性に焦点を当て、選抜と育成を組み合わせることで、組織は成功の確率を高めることができる。同時に、こうした判断には本質的に不確実性が伴うことを認識し、新たな情報に応じて柔軟に判断を見直す姿勢も必要だ。
結局のところ、ポテンシャルに賭けるということは、未来を予測するというよりもすでに潜在しているものを見抜くことだ。彫刻家ミケランジェロの言葉を借りれば、大理石の中に天使を見出し、それが解き放たれるまで彫り続けることなのだ。


