ベナモー氏は、日本がこれからAIのアプリケーション・フェーズにおいて勝ち筋を見いだすためには、海外発の基盤技術や巨大クラウドに依存するだけでなく、日本独自の「ソブリンAI(主権的AI)」環境を構築し、適切な規制基準を設計することが肝要だと指摘する。
フィジカルAIと宇宙インフラにも広がる投資機会
ベナモー氏はBGVが現在注視している「次なるフロンティア」として、物理的な現実世界へのAIテクノロジーの適用、言い換えれば「フィジカルAI」と、宇宙インフラへの拡張を挙げていた。
そしてもうひとつは、防衛技術の民間転用(デュアルユース技術)である。世界的に防衛予算が増加する中、軍事目的で開発された自律型技術が産業用途にも波及している。
イスラエルのスタートアップ企業であるPerceptoは、自律型ドローン技術を用いて石油精油所などの広大な施設の点検を無人化している。
同じイスラエルに拠点を置くハイテク企業のCivan Lasersは、ミサイル防衛用のコヒーレント・レーザー技術を応用し、造船やタービン製造における金属溶接をAI制御で精密に行うシステムを開発した。
さらに、AIの普及に伴って計算資源への需要が急増する中、地上の電力や冷却、用地の制約を超える新たな選択肢として、宇宙空間にデータセンターを設置する構想も現実味を帯びつつある。
「今後数カ月以内に、宇宙空間でのデータセンター構築に向けた動きが本格化すると見込んでいます。宇宙であれば24時間、太陽光発電が可能であり、冷却の課題も存在しません。地上のデータセンターのような単一障害点を持たない、分散型の衛星コンステレーションが構築されるでしょう。私たちは現在、極端な温度変化や高放射線に耐えうる宇宙用コンポーネントの開発を進める、イスラエルのRamon.Spaceなどのスタートアップ企業に注目しています」
生成AIの普及をきっかけに、テクノロジーの活用領域は画面の中にとどまらず、実社会の業務プロセスへと広がり始めている。製造現場やエネルギーインフラ、さらには宇宙空間までAIの可能性は拡張している。
ベナモー氏が見据えるのは、AIが人を支える新たな労働力として、社会の基盤システムに本格的に組み込まれていく未来だ。それは「Enterprise 5.0」とも呼ぶべき、新しい時代の幕開けを示している。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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