AI時代のリスク管理は企業競争力の条件になる
エンタープライズ企業がAIエージェントを本格導入する際の課題として、システムの不確実性と運用コストの管理が挙げられる。BGVはこれらの課題を解決するため、基盤技術を手がける世界のスタートアップ企業にも投資を行っている。
「Fiddler」は企業がAIエージェントを安全に運用するための管理基盤を提供している。AIの動作や出力を監視・評価し、信頼性やコンプライアンスを確認しながら、問題のある挙動をリアルタイムで制御する。カスタマーが複雑なAIシステムを、本番環境で安心して使えるように支援することが狙いだ。
「Pay-i」は企業の生成AI利用コストを可視化し、最適化するためのAIネイティブな管理基盤を開発した。モデルやクラウドごとの利用状況を事業成果に結び付けて、企業がAI投資の費用対効果や将来コストを把握できるようにするツールだ。
サイバーセキュリティの領域における「AI対策」もまた喫緊の課題になりつつあることをベナモー氏は指摘している。
「ソフトウェアの脆弱性は急増しており、企業に求められる対応速度も数週間単位から数時間単位へと変わりつつあります。AIがサイバー攻撃に悪用されれば、大手銀行や国際金融システムを停止に追い込むほどのリスクにもなり得ます」
こうしたリスクに対応するため、BGVは産業界のリーダーによる自発的なガバナンスの構築を後押ししている。同社も関与して設立されたEthical AI Governance Group(EAIGG)は、AIガバナンスの実務団体として、AIシステムがもたらすプライバシー、説明責任、透明性のリスクに対応しながら、AIネイティブ企業が責任ある形で技術を開発・導入・運用するための指針の作成を進めている。
2025年9月には「The AI Native Startup Playbook」を公開した。同書では、データ取得やモデル学習を中核資産とするビジネスモデル、ハイブリッドな導入手法など、従来のSaaSとは異なるAIネイティブ企業ならではの開発・運用基準が体系的に整理されている。
米国主導のAI基盤から日本型の社会実装へ
AIの社会実装フェーズにおいて、日本が果たすべき役割は大きいとベナモー氏は語る。これまでは米国主導の展開となったが、アプリケーション・フェーズのステージにおいては異なる優位性が求められるためだ。
「日本はこれまでAI革命の中心的なプレイヤーにはなれていなかったと思います。しかしながら、これからは極めて重要な役割を担う機会があります。日本は伝統的に入念なテストを繰り返しながら、信頼性が高く、社会全体に展開しやすい高品質なシステムを構築してきたからです」
つまり、基盤モデルやGPU、巨大クラウド基盤のようなAIの土台では米国企業が先行しているが、AIを社会実装し、企業や医療、行政などの現場で信頼できるアプリケーションとして展開する段階では、日本に勝機があるという見立てだ。


