シリコンバレーの投資会社Benhamou Global Ventures(BGV:ベナモー・グローバル・ベンチャーズ)を率いるファウンダー兼ゼネラル・パートナー、エリック・ベナモー氏がいま見据えているのは、生成AI関連テクノロジーがもたらす「第3の波」だ。
生成AIがブームの段階から、いま急速に社会実装のフェーズへ移行しつつある。北米のスタートアップ投資の最前線では何が起きているのだろうか。ベナモー氏へのインタビューを通じて、グローバルな投資潮流の変化、その中で日本が果たすべき役割、そして宇宙空間にまで広がる「次なるフロンティア」の所在に迫る。
AIの主戦場はアプリケーション・フェーズへ
AIが進化してきたプロセスは、インターネットやクラウドの普及過程と軌を一にしている。1990年代から2000年代にかけてインフラストラクチャーが構築され、その上にSaaS(Software as a Service)を中心としたアプリケーションの層が形成された。
BGVは現在のテクノロジー市場のフェーズを、SaaSの先にある「Enterprise 5.0」と定義している。これは、ソフトウェア自体が自律的な作業員として機能する「Software As A Worker」の時代への移行を意味している。
「私たちは現在、AIの発展における第3段階、すなわち『アプリケーション・フェーズ』に突入しています。NVIDIAに代表されるインフラ企業の躍進は注目に値しますが、今後、このインフラの上に構築されるアプリケーション企業が創出する価値は、3兆から5兆ドル規模に達し、インフラ層の価値を大きく上回るだろうと見ています」
言語モデルから物理法則や因果関係を理解する「ワールドモデル」へと技術が拡大する中で、AIは自律的にリサーチ、推論、計画、実行を行う「エージェント型システム(Agentic Systems of Action)」に進化しているのだと、ベナモー氏は語る。
BGVの投資対象は、このようなシステムを活用して企業の基幹業務の自動化に挑む、世界各地のスタートアップに広がりつつある。
トップAI人材の分散が変えるスタートアップ投資
ベナモー氏が語る「アプリケーション・フェーズ」で躍進するスタートアップの特性は、従来のSaaS企業とはやや異なっている。
BGVが着目しているのは、AI分野におけるトップ人材の地理的分布と資本効率の差異である。同社が参照する、DeepSeekのAIチームの教育的背景を検証した調査結果では、最上位0.05%のAI研究者の出身は米国に限らず、インド、中国、イスラエル、フランスなど世界中に分散していることが示されている。一方で、トップAI人材の報酬水準を比較すると、米国の水準に対してイスラエル(テルアビブ)、カナダ、フランス、インドなどの地域では資本効率が3倍から6倍程度高くなる傾向も示されている。



