サイエンス

2026.05.22 18:00

しゃっくりが止まらない理由は「魚の名残り」、3億年前の進化が関係

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「しゃっくりの起源」に関する別の仮説

健康な成人にこれほど頻繁に見られる反射が、本当に、単なる進化的過去の痕跡なのだろうかと、まだ疑っている人もいるかもしれない。興味深いことに、しゃっくりの発達的機能に関する新たな証拠が集まりつつあり、それらは検討に値する。

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ヒトの胎児は、通常の呼吸のための神経回路が発達する前から、しゃっくりをし始める。しゃっくりをつかさどる運動回路の形成は、肺の通気をつかさどる運動回路の形成よりも、胎児発達の早い段階で起こる。新生児は、活動時間の約2.5%をしゃっくりに費やす。未熟児で誕生した場合、さらにしゃっくりの時間が長くなる。

これらはみな、単なる偶然ではない。しゃっくり反射は、いわば「発達的前駆体」であり、洗練された呼吸パターンが開発途中であるあいだ、代わりに機能を果たす、原始的な呼吸プログラムであると考えられるのだ。

こうした知見に基づき、前項でまとめた「両生類の名残り」仮説と興味深い形で対立する、第二の仮説が誕生した。消化器専門医のダニエル・ハウズは2012年、『BioEsssays』に掲載された論文のなかで、しゃっくりは乳児期の哺乳類において、胃に溜まった空気を排出する機能を果たす、いわば強制的な「げっぷ」である可能性があると論じた。

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しゃっくり反射の求心性配線(afferent wiring:身体の末梢から、脳や脊髄といった中枢神経系に向かって情報を伝える神経回路のつながり方)は、この仮説を裏づける証拠の一つだ。反射の引き金となる刺激は、食道の下部から胃にかけての部位から生じていると見られる。また、しゃっくりと同時に起こる食道下部の括約筋反射は、ガスの上方への排出を促すはたらきをもつ。

新生児という、最も活発に吸乳する年齢層において、しゃっくりの頻度が高いという事実も、この仮説に信憑性を与えている。

もちろん、どちらの仮説も真実を含む、という可能性もある。しゃっくり反射は、太古の祖先から受け継いだ遺産でありつつ、哺乳類において、ちょっとした二次的機能を帯びたのかもしれない。

ここで、一つ注意書きを添えておこう。ほとんどのしゃっくりは数分で収まり、多少の違和感のほかには何の悪影響もないが、しゃっくり反射が不吉な兆候である場合もある。

しゃっくりが48時間以上続く場合には医学的注意が必要であり(「持続性吃逆」と呼ばれる)、1カ月以上続く場合は「難治性吃逆」と呼ばれ、重篤な基礎疾患(横隔膜の周囲の損傷、感染、代謝異常、胸部のがんなど)との関連が強く疑われる。こうした難治性症例の性比は男性に偏っている。

まれにだが、しゃっくりが心筋梗塞などの重篤な疾患の初期症状として記録される場合もある。こうした症例では、通常は注目されることのない反射が、耳を澄まして聞き取るべきシグナルとなる。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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