魚において、エラの筋肉を制御する神経の配線は、解剖学的に理にかなったものだ。一方、横隔膜が首のはるか下に位置する陸生哺乳類においては、かなり非合理的なデザインとなる。
だが、進化が何かをゼロから再構築するだけのために、いったんすべて取り壊すことはめったにない。たいていは、その時点で手元にあるものに手を加えていく。そんなわけで、私たちはいまも、数億年前に絶滅した動物が利用していた配線の構造を、内に秘めたまま生きているのだ。
このイレギュラーな構造は、実用性に影響を及ぼしている。横隔神経は、長く曲がりくねった経路をたどるために、周囲の器官に生じた変化(たとえば胃の膨張、食道の炎症、胸部の腫瘍など)の影響を受けやすい。横隔神経の経路上に生じた刺激は、どんなものであれ、しゃっくりの原因になり得る。
しゃっくりの起源
横隔神経の紆余曲折が、かつて魚だった私たちの過去からの遺産だとすれば、しゃっくり反射そのものの起源は、私たちが両生類だった頃にある。これこそが、2003年に学術誌『BioEsssays』に掲載された有名な論文の核心であり、今もなお、しゃっくりの起源を説明する最有力仮説とされるものだ。
この論文で著者たちは、驚くべき知見を提示した。ヒトのしゃっくりのさなかに見られる、筋肉と神経の活動パターンは、オタマジャクシがエラ呼吸をするときのパターンに酷似しているというのだ。
オタマジャクシは、エラに水を通すとき、同時に、発達途上の肺に水が入らないようにしなければならない。そのためオタマジャクシは、吸気筋を急激に収縮させつつ、声門を閉じて気道を閉鎖する。神経学的観点からは、この動きはしゃっくりに極めてよく似ている。両者の類似性は細部まで徹底しており、単なる偶然とは考えられない、というのがこの論文の主張だ。
研究者たちは、両者のつながりを示唆する薬理学的な証拠も示した。具体的にいうと、オタマジャクシのエラ呼吸反射と、ヒトのしゃっくりは、いずれも二酸化炭素濃度の上昇によって抑制される。息を止めるという、昔ながらのしゃっくりの止め方が、時にうまくいくのはこのためだ。
興味深いのは、しゃっくりとエラ呼吸反射が、いずれもバクロフェンという、GABA-B受容体に作用する薬剤の投与によって止まることだ。このように抑制メカニズムが共通することも、単一の起源を示唆している。太古の昔からの神経プログラムが、3億7000万年にわたって歩んできた別々の進化の歴史を超えて、ヒトとオタマジャクシという異なる体のなかで作動しているのだ。
何より驚きなのは、しゃっくりを引き起こす電気的信号の発信源である脳幹が、両生類において、エラ呼吸を制御していることだ。これは、我々ヒトの脳幹が、進化的な意味で、かつては両生類の脳幹だったことを示唆する。
脳幹は、数億年にわたる歳月のなかで、複雑化し改良されはしたものの、新品に交換されたわけではない。だからこそ、脳幹は時折、はるか昔のサブルーチンに立ち返るのだ。


