5月10日(日)に下弦の月を迎えた北半球の中緯度地域では、夏の短夜が訪れる前の貴重な暗い夜空が始まった。月は夜半過ぎまで昇らず、夜ごとに月の出の時刻は遅くなっていく。
銀河が夜空を支配する季節の幕開けだ。深宇宙の観測に挑むなら、ぜひこのタイミングで始めたい。また、月明かりがないということは、夜でも明るい都市部からも星が見えやすくなり、誰もが知る代表的な星座のいくつかをじっくり観察するチャンスの到来でもある。今この時期にこそ見逃したくない天体を5つ紹介しよう。
夜空の見どころ
下弦の月を過ぎると、月の出は夜半を回る。宵から夜更けにかけての空は暗く、満月を挟んだ2週間に比べてはるかに多くの星が見える。
今年5月の宵の空では、ひときわ明るい2つの輝きが存在感を放っている。日の入り45分後に西の空を眺めてみてほしい。高いところに光っているのが木星で、その右下方・高度20度あたりにきらめくのが「宵の明星」の金星である。2つの惑星は6月9日の最接近に向けて、少しずつ互いの距離を縮めているところだ。
今月は「銀河の季節」でもある。南の空に見えるしし座やおとめ座は、天の川をはるか遠く越えた宇宙への窓だ。この2つの星座の方向には数多の銀河がひしめく銀河団があり、望遠鏡を使えばその姿を観察できる。
北斗七星をたどる
頭上に目を向ければ、北斗七星が年間で最も高い位置に見える。これは天体観測に臨むにあたってまたとない便利な目印になる。
7つの星が形づくる「ひしゃく」の先端に並ぶ2つの星は「指極星(しきょくせい)」と呼ばれ、北極星の位置をまっすぐに指し示している。「ひしゃくの柄」のカーブをそのまま伸ばした「春の大曲線」をたどっていけば、春の夜空で指折りの明るい星の1つ、うしかい座の1等星アルクトゥルス(アークトゥルス)に出会う。
アルクトゥルスと「かんむり座」を見つけよう
「春の大三角」の一角を担うアルクトゥルスはこの時期、南東の宵の空にオレンジ色の輝きを放っている。この1等星は、ただ明るいだけの星ではない。地球から約37光年先にある赤色巨星で、長い恒星の生涯の晩年に差し掛かっている。暖かなその色は、特に暗い夜空でなら肉眼ですぐに見つけられる。
そのすぐ左側を見ると、7つの星が三日月の形に並んだ小さな星座がある。「北の王冠」の異名をもつ、かんむり座だ。
しし座の「三つ子銀河」を覗いてみよう
5月の夜は、天の川銀河の先に広がる広大な宇宙を眺めるのにうってつけ。南西の空高く君臨するしし座には、アマチュア天文家にとって屈指の見ごたえのある銀河群がある。
「しし座の三つ子銀河(Leo Triplet)」として知られるM66銀河群を構成するM65、M66、NGC 3628の3つの銀河は、夜空では3つの淡い光の斑点として見えるが、それぞれが数十億個の星からなる広大な「島宇宙」だ。暗い空でなら、双眼鏡でもその存在を見つけることができる。小型望遠鏡を使えば、引き伸ばしたような渦巻銀河の姿が明らかになる。
夏にかけての夜空
夜空は来週にかけて最高の観測条件が続く。17日に新月を迎える月はどんどん細くなり、淡い銀河や星団を観察するにあたってこの春最高の機会をもたらす。月末にかけての1週間は逆に、月が空を明るく照らしはじめ、31日に今月2回目の満月「ブルームーン」が昇ってくる。
6月に入ると「夏の大三角」を形づくる名高い星々を戴く夏の星座が夜空を支配するようになる。8月12日には欧州で大規模な皆既日食が起こり、新月の闇夜の中で「ペルセウス座流星群」の活動が極大となる。



