スナック菓子メーカー日本最大手のカルビーは12日、中東情勢の悪化に伴うインク原料の不足により、今月末までに自社製品の包装を白と黒の2色に切り替えると発表した。
この白黒印刷への変更は、石油由来のインク原料であるナフサの供給が滞っているためだという。日本はナフサ消費量の約4割を中東から輸入しているが、その輸送経路であるホルムズ海峡は、米国とイスラエルが2月末にイランを攻撃して以降、事実上封鎖されている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ナフサの不足は自動車や浴室設備、塗料のメーカーにも影響を及ぼしており、これらの業界でも原料の確保に問題が生じ始めている。
3月には日本のスナック菓子メーカー、山芳製菓が、ホルムズ海峡封鎖の影響で工場設備に必要な重油が不足し、主力製品であるポテトチップス「わさビーフ」の生産を一時停止せざるを得なくなった。
同海峡の封鎖は世界中でさまざまな物資不足を引き起こしている。インドでも、缶の製造に必要なアルミニウムの不足により、米飲料大手コカ・コーラの炭酸飲料「ダイエット・コーク」が品薄となり、同商品が法外な価格で取引される現象が起こっている。同国では、調理用ガスの不足により閉店に追い込まれるレストランが出てきているほか、天然ガスの不足で製造を停止する陶磁器工場もある。
世界のヘリウム供給の約3分の1を担うカタールは3月、液化天然ガス(LNG)施設がイランの攻撃を受け、ヘリウムの生産を停止した。これにより、磁気共鳴画像装置(MRI)の稼働や、人工知能(AI)用チップ、スマートフォン、電気自動車(EV)の製造が脅かされている。
AI用チップの製造にはタングステンも欠かせない。タングステンは極めて高い耐熱性と導電性を備えたレアメタル(希少金属)で、装甲貫通弾の製造にも不可欠な素材だ。米国とイスラエルは現在、イランへの攻撃で装甲貫通弾を大量に消費しており、米国のタングステン備蓄が急速に減少している。
この軍事衝突は、世界の硫黄供給にも深刻な影響を及ぼしている。硫黄の多くはペルシャ湾岸の石油精製所から供給されており、農業や歯磨き粉の製造、飲料の風味調整、上水処理など、幅広い産業で利用されている。
世界で取引される石油の相当量が通過するホルムズ海峡の封鎖によって即座に原油価格が跳ね上がったが、封鎖が長期化するにつれ、世界経済に対する二次的、三次的な影響が表面化しつつある。専門家は、同海峡が再開されたとしても、世界経済への影響は長引く可能性が高いと警告している。
米国では、ガソリン価格の高騰が既にインフレを引き起こしており、ドナルド・トランプ大統領は、一定の緩和策としてガソリン税の一時停止を提案している。米自動車協会(AAA)によると、12日時点のガソリンの全国平均価格は1ガロン(約3.8リットル)当たり4.50ドル(約710円)で、一部の州では5ドル(約790円)を超えている。1年前は3.14ドル(約500円)だった。
米政府は今後どう動くのだろうか? トランプ大統領が、現在の停戦は「生命維持装置につながれている状態だ」と述べたことで、同大統領がイランでの大規模な戦闘の再開を真剣に検討しているのではないかとの憶測が広がっている。



