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2026.05.19 11:15

食虫植物がスズメバチを太らせて食べる残酷な理由、蜜を与える真の狙い

プレスリリースより

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食虫植物と虫は、捕食者と被捕食者という関係に思えるが、じつはそう単純なものではなかった。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループが数百時間におよぶ食虫植物とスズメバチの観察を行った結果、そこから持ちつ持たれつの関係と、さらにちょっとばかり怖い現実が見えてきた。

カリフォルニアの湿原に生育するランチュウソウ(カリフォルニア ダーリントニア)という食虫植物は、スズメバチを捕食する。しかし、OISTの統合群集生態学ユニット、ディヴィッド・アミテージ准教授らによる研究グループの観察では、捕食されたスズメバチは全体のわずか2パーセントで、ほとんどはランチュウソウの花の蜜を吸って飛び去っていた。

ランチュウソウ。stock.adobe.com
ランチュウソウ。stock.adobe.com

研究グループは、その周辺の植物とスズメバチを採取して、それらに含まれる窒素の量を測定した。窒素の同位体は、食物連鎖の地位を示す指標だ。軽い同位体は簡単に排泄されるが、重い同位体は身体に蓄積される。そのため、重い同位体の濃度が高いほど上位の捕食者であることがわかるのだ。

調査の結果、ランチュウソウは、昆虫という植物よりも高位の生き物を捕食するため重い同位体の濃度が他の植物に比べて高いことがわかった。また、ランチュウソウの近くにいたスズメバチの体内でも重い窒素同位体の割合が高く、ランチュウソウの蜜を摂取していることが示された。

全体のわずか2パーセントしか捕食されないため、スズメバチにとってランチュウソウは、比較的平和な食料源ということになる。そこには共存関係が見られるわけだが、決して仲良しの関係とは言えない。研究グループによればランチュウソウは、「多くの昆虫をすぐに捕獲するのではなく、将来にわたって利用できる餌資源を確保している可能性があります」と指摘する。つまり、蜜を与えてハチを太らせて、あとで食べようとしているのだ。

アミテージ准教授は、「植物が、自分が食べるために昆虫を育てていると思うと、なんだか面白いですね」と無邪気に話すが、ちょっとばかり残酷な話に聞こえる。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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