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2026.05.19 17:00

ケンタッキーダービー有力馬を育てた、純資産約7900億円の米運送業界ビリオネア

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規制緩和後の事業立て直し

刑事事件とプライムの経営危機を乗り越えたローは、規制緩和によって再編されたトラック輸送業界で事業を立て直した。1980年の自動車運送事業者法は、貨物輸送事業への参入や営業エリア、料金をめぐる長年の連邦規制を緩和した。競争の激化や運賃の下落により古くからの企業が対応に苦しむ中、業界では倒産が相次いだ。

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ブルッキングス研究所のエコノミスト、クリフォード・ウィンストンは、規制緩和以前のトラックドライバーという仕事について、「かなり実入りがよかった。良い仕事だった」と語る。規制緩和は「消費者にとっては大きな勝利だった」一方、「トラック運転手や効率の悪い企業にはとても厳しいものだった」とウィンストンは付け加えた。

同業大手の頭金158円リース制度に学ぶ

ローは、効率的な運営を実現するため、業界で最も効率が高いと見られていた会社のやり方に学んだ。その相手は、カンザス州フォートスコットに拠点を置くMidwestern Distributionだった。プライムは当時、自社よりも規模が大きい同社にトラックをリースしていた。

Midwesternは、新人トラック運転手を集めるための「頭金1ドル(約158円)」リース制度で知られていた。この制度は、リース期間の終了時にトラックを所有できると約束していたが、その期間はメンテナンス費用に応じて変動し、多くのドライバーは支払いを完了できなかった。Midwesternにとっては、その仕組みが利益につながった。同社は、次の希望者と新たなリース契約を結んで、戻ってきた車両を再び貸し出すことができたからだ。

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「今なら『搾取的』という言葉が使われるだろう。だが当時、我々はそんな言い方はしていなかった」と語るのは、1985年から1987年までMidwesternで「1ドル(約158円)トラッカー」として働いたラルフ・エシュバウマー(64)だ。

Midwesternの経営幹部を引き抜く

1980年代初頭、ローはMidwesternの手法をプライムに取り入れるため、Midwesternの副社長だったフレッド・メルツや、同社のマーケティング担当幹部のスティーブ・ワトキーなどの人材を次々と引き抜いた。「ロバートはそのやり方でプライムを立て直した。それが、現在のような大きな成功の土台を築いた」と、1978年から1987年までMidwesternで働いていたミッチ・ヒクソン(70)は語る。

だが、ローはこの見方を否定する。「Midwesternについて言えば、確かに優れたモデルを持っていた。しかし、我々がそれを全面的に取り入れたという話は、かなり誇張されている」。

独自の企業文化と1992年衛星通信への投資

Midwesternとプライムの事業アプローチの違いは、ローが独自に育てた企業文化にある。その文化は、独立請負業者であるドライバーだけでなく、日々ドライバーと接することの多い2000人の正社員からも、ローへの強い忠誠心を引き出している。

プライムは、優秀な人材に報いるため、社内のあらゆる階層にボーナス制度を用意している。ローはまた、本社の環境整備にも多額を投じ、ジムを建設し、社内託児所を設け、スターバックスの店舗を開設した。「この会社は、トラック輸送業界のアップルだ。ここで働く人は誰でも、他社で同じ仕事をする人より多く稼げる」と、1989年に初級職としてプライムに入社し、その後長年フリートマネジャーを務めたスティーブン・タッシン(67)は熱をこめて語る。

もう1つの強みは、データを活用したテクノロジー基盤だ。プライムは、多くの競合他社がまだ公衆電話に頼っていた1992年に、いち早く衛星通信に430万ドル(約6億8000万円)を投じ、実質的にすべての車両にコンピューターを搭載した。スプリングフィールドにあるプライム本社には、環境に配慮したタイヤリサイクルセンターや水の再利用システムも備えられている。

トラック輸送以外への事業拡大、組織犯罪対策法違反の訴訟

ローの事業領域は今やトラック輸送をはるかに超えており、それを取り巻く紛争もまた同様だ。2026年2月、ナッシュビルで2億ドル(約316億円)の高級高層ビルを開発する会社が、ロー本人と、プライムおよびその幹部数人、さらにキリアン・コンストラクションとウルヴァリン・ランド・ホールディングスを相手取り、連邦RICO法(組織犯罪対策法)違反の訴訟を起こした。訴状は、キリアン・コンストラクションがプロジェクト管理をずさんに行ったと主張している。その結果、開発会社はローが同じく支配する融資会社ウルヴァリン・ランド・ホールディングスからの搾取的融資に追い込まれたという。

ローとプライムは記事公開時点で訴状に回答していなかった。「中身のない金目当ての訴えであり、全面的に争う」とローは述べる。フロリダ州パナマシティの「カリプソ」と呼ばれるタワーをめぐる類似の訴訟は、その後、非公表の条件で和解した。ローは「カリプソは我々の勝利だった」と語る。

レネゲイト買い戻しが示す取引感覚

ケンタッキーダービーで注目されたレネゲイトの所有をめぐる経緯からも、ローの抜け目ない取引感覚がうかがえる。2年前、レネゲイトがまだ実績のない1歳馬だったころ、ビリオネアのマイケル・リポールがオークションで約95万ドル(約1億5000万円)で買い取った。スポーツ飲料「ボディアーマー」の共同創業者でサラブレッドのブリーダーでもある人物だ。ところが、ローはほとんどすぐに売却を後悔し、リポールとの間で、同じ評価額を前提にレネゲイトの50%の持ち分を買い戻す契約を結んだ。「これほどの馬を手に入れられる確率は2万分の1程度だ」とリポールは感嘆する。

大学を中退し、破産を乗り越え、刑事暴行事件でも有罪を免れてビリオネアとなったローにとって、このような賭けは、決して無謀なものではなかったようだ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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