経済・社会

2026.05.20 13:30

レアアースの中国依存脱却。10年分の国家備蓄と非中国系サプライチェーン構築

高性能永久磁石の原材料となるレアアース。

高性能永久磁石の原材料となるレアアース。

レアアースの安定供給には、非中国系サプライチェーンの構築、不断の研究開発、国家備蓄が必要だ──。レアメタルの精錬・リサイクル技術の世界的権威、岡部徹にその戦略を聞いた。


レアアースとは、レアメタルのうち17種類の金属元素のグループを指す。レアアースに注目が集まるのは、電気自動車用の高性能モーターや風力発電などに必要な高性能永久磁石をつくるために欠かせない金属が含まれているためだ。特に主材料のネオジムや、微量添加することで高温でも強い磁力を維持できるようになるジスプロシウム、テルビウムなどの需要は急拡大している。

レアアースはその名称から地球上にごくまれに存在すると誤解されがちだが、世界中にレアアース鉱山があり、陸上で発見されているだけでも1億3000万トン以上、世界需要に換算すると1000年分以上の埋蔵量がある。ではなぜ、レアアースの供給は中国一国に偏っているのか。それは、採掘や製錬に伴う廃棄物の処理コストなどの「環境コスト」がほかの国に比べて極端に低いからだ。

レアアースの鉱石はウランやトリウムといった放射性物質を含んでいることが多い。鉱石からレアアースを分離・精製する際には、こうした放射性物質や重金属を含んだ有害な廃液、排ガスが発生する。私は35年にわたりレアメタルを研究するなかで、中国のレアアースの生産現場を何度も訪れているが、そうした有害な廃棄物が何の処理も施されないまま捨てられている状況を目の当たりにしてきた。中国のレアアース生産にかかる環境コストはほぼゼロだと考えられる。だからこそ中国は、他国が太刀打ちできないほど圧倒的な低コストでレアアースを生産し、世界中に安価に供給することが可能だったのだ。

日本では今、南鳥島沖の海底から採掘された「レアアース泥」について、メディアで盛んに取り上げられている。研究としては夢があるプロジェクトだが、経済合理性や技術的な観点から、私は現時点での産業利用は難しいと考えている。なぜならば、鉱物の産業利用は、採掘と製錬、廃棄物処理などにかかるコストこそがポイントになるからだ。国内資源の開発を行うべきかどうかは、技術の確立後、コスト解析を行い議論すべきだ。仮に一部のレアアースを国産化できても、日本の資源セキュリティーは強固にならない。

短期的には中国依存を大きく減らすことは難しい。では、日本はどうすればよいのか。2010年の尖閣諸島の領有問題に端を発した中国による事実上のレアアース輸出停止を契機に、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は豪レアアース生産大手のライナス・レアアースに出資した。信越化学工業はベトナムに、規模は小さいながらもレアアースの分離精製会社を設立した。今後もこのような事例を増やし、非中国系サプライチェーンの確立に国を挙げて取り組むべきだ。

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文=フォーブス ジャパン編集部

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