経済・社会

2026.05.20 13:30

レアアースの中国依存脱却。10年分の国家備蓄と非中国系サプライチェーン構築

高性能永久磁石の原材料となるレアアース。

技術力で「生産大国」に復帰を

レアアースに限らずレアメタルのリサイクル技術の開発を進めていくことも重要だ。私は現在、東邦チタニウムと共同でチタンの「アップグレード・リサイクル」の研究を進めている。チタンは鉄の約60%の重さで強度は約2倍。軽くて丈夫なことから航空機の機体やエンジン、建物、人工骨などに使われる。こうした産業から出たチタンのスクラップをリサイクルのために再溶解すると、不純物である酸素の濃度が高まって使い物にならなくなるのが課題だった。そこで、我々は2000ケルビン(約1700℃)という融点付近で溶かして、イットリウムなどのレアアースを加えることで酸素を除去する技術を発明した。現在は基礎研究の段階だが、実用化されれば、鉱石から分離・精製するよりもコスト、エネルギー、環境負荷を抑えて高純度のチタンを生産することができるだろう。

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そもそも、かつて日本はチタンの「生産大国・技術超大国」だった。私がレアメタルの研究を始めた35年ほど前、日本は世界のチタンの半分をつくって全世界に供給していた。しかし、その後生産を拡大した中国に世界シェアトップの座を奪われた。ただ、現在も日本は20%近いシェアを維持し世界第2位、西側諸国随一の生産国として欧米の航空機産業などに高品質のチタンを供給している。すでにもっている高い技術をさらに発展させていくことで、再び生産大国・技術超大国として世界に貢献できるはずだ。

そして、レアアース・レアメタルはリサイクルだけでは足りない。過去に生産され、現在廃棄されている製品から回収できるレアメタルでは、これから新たに必要となる製品向けの需要を満たすことができないためだ。だからこそ、レアアースを含むレアメタルについて、国内需要の10年分の国家備蓄を行うべきだ。十分な量を備蓄していれば、自国の産業を守るだけでなく、有事の際に資源不足で困っている同盟国に支援物資として貸し出すこともできる。これにより、国際社会における日本のプレゼンスや交渉力を高める大きなメリットが生まれるだろう。


岡部徹◎1993年、京都大学で博士号取得。米マサチューセッツ工科大学博士研究員、東北大学助手などを経て2009年より東京大学教授。現在は同大副学長、生産技術研究所教授。専門はレアメタルの精錬・リサイクル技術。

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文=フォーブス ジャパン編集部

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