創業者は結果とは決断の産物だと教え込まれてきた。これは有用な考え方だ。責任感や緊張感、集中力を生み出す。だがそれは同時にかなりの部分において幻想でもある。
本『サイコロジー・オブ・マネー』の中心的な考えの1つは、運やリスクは私たちが認めたくないほど大きな影響力を持っているということだ。これは人間が非合理だからではなく、複雑なシステムにおいては特に結果が部分的にしか見えず、めったに再現できない要因によって形作られるからだ。
スタートアップはそのようなシステムの典型例であり、合理的かつ妥当な運営上の判断を行う上で不可欠な認識だ。
成功が物語になるとき
成功したスタートアップは振り返ると成功が必然であったかのように見える。なぜなら、その歩みが整然とした物語として再構築されるからだ。こうした物語は必ずしも虚偽というわけではないが、不完全なものだ。
著作家のモーガン・ハウセルは著書の中でビル・ゲイツを例にこの構造を説明している。ゲイツは並外れて知的で意欲的、そして技術的才能に恵まれている人物として語られることが多い。だがハウセルはあまり注目されない要因を指摘する。それは、ゲイツは1960年代後半にコンピューター端末を利用できた数少ない高校の1つに通っていたということだ。早い段階で端末を触るというこの機会によって、ゲイツは同世代のほとんどがそのような機会を持っていなかった時代に何千時間もの練習を積むことができたのだ。
ポイントはゲイツの能力を過小評価することではない。重要な優位性は部分的に環境によるものだったことに着目することだ。そうした早い段階でのアクセスがなければ、ゲイツのその後の人生は大きく異なっていたかもしれない。だが多くの語りでは判断や個人の特性ばかりに焦点が当てられ、それを可能にした条件にはほとんど触れられない。
同様のパターンはスタートアップの世界でも見られる。企業が成功すると、その過程のあらゆる段階が一貫した戦略の一部として解釈される。どちらに転んでもおかしくなかった決断さえも先見の明があったかのように再解釈される。不確実性は意図として書き換えられる。
これは危険なフィードバックのループを生む。創業者たちはこうした成功事例を研究し、目に見える行動こそが成功の主な要因だと考えて再現しようとする。



